ラジオアナウンサーが「現場取材」に出向く理由 これからのマスメディアのあり方とは?
私自身、駆け出しのころからずっと中継コーナーのレポーターを担当していたこともあり、千葉県各所はそれぞれになじみ深い土地であります。また、ニッポン放送のAM電波送信所は、甚大な被害が出た千葉県木更津市にあります。
台風で停電し、非常用発電機で放送を継続しましたが、発電機も停止。一時、都内の予備送信所から放送し、その後、木更津市からの放送を再開しました。そして、送信所があるということは、普段、千葉ではニッポン放送がよく聞こえるということ。
私は発災5日目にようやく被災地の南房総市などに入って取材することができたのですが、その時点でも停電や通信障害は一部に残っており、電話を使ってのやりとりができない地域がありました。東京では台風が去った翌日にはいつもどおりの生活が戻っていただけに、5日目にして携帯・スマホを使えない環境が残っていたことに驚き、いかに情報収集が困難を極めたのかがありありとわかりました。
1億総発信者とも言える時代
スマホの電池が切れてしまえば、現地にいる人たちが起こっていることを外へ発信することもできなくなってしまいます。結果、台風15号の被害に対する評価が現場と都心のスタジオで大きな差となって表れ、スタジオの私は現場の空気と著しくかけ離れた放送をしていました。
インターネットがこれだけ普及し、1億総発信者とも言える時代になりましたが、電気が失われればまったく発信できなくなります。ネットの脆弱さとともに、メディアが報じないことのリスクをまざまざと見せつけられました。
現場、とくに災害の直後などに現場に行くことは、救助活動の妨げになるといった批判を浴びることもあるでしょう。細心の注意を払って取材をすることはもちろん、人命に関わることには配慮が必要であることは言うまでもありません。また、単にキャスターが現場に行きました、という「画」を撮るためといった、アリバイ作りのような取材であれば意味がないでしょう。
現場に出ていくことは、現場とスタジオ、現地とそれ以外の場所との空気の差を埋めることにもなります。淡々と、起きていることをお伝えするために、私はためらわずに現場に出ていきたいと思います。そうして提供した情報によって、さまざまな議論が深まることを願っています。
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