日本製鉄の大赤字が示す鉄鋼不況の深刻度

鉄鋼メーカーの国内リストラは序章に過ぎない

しかも、呉製鉄所のように「高炉を持つ一貫製鉄所をやる(閉鎖する)のは初めて」(右田彰雄副社長)。異例の措置は、日本製鉄の置かれた事業環境の厳しさを物語る。

日本製鉄が今回、過去最大の大赤字に転落するのは巨額減損の影響が大きい。鹿島製鉄所の1504億円、名古屋製鉄所の1228億円を中心に4000億円近い減損を計上。その他にも海外合弁会社の撤退に備えた損失など約1000億円の損失計上を見込む(大半は第3四半期までに計上)。

鹿島は市況悪化が著しい海外輸出の依存度が高く、名古屋は自動車用の採算が悪いなど、事業の収益力に問題がある。そもそも、日本製鉄単独の鉄鋼事業の実質収益(在庫評価損益を除く)は1300億円の赤字見込みで、2020年3月期を含めると3期連続赤字。鹿島製鉄所や名古屋製鉄所などの減損という特殊要因を除いた実力値でみても利益を稼げなくなっているのだ。

JFEが減損を計上する可能性はあるか

しかし、日本製鉄とJFEで表面上の数字ほど実力に差があるわけではない。JFEも製鉄事業の利益は通期でゼロの見通し(2019年3月期は1613億円)。下期(2019年10月~2020年3月)は200億円近い赤字となる計算だ。製鉄事業の中核子会社JFEスチール単独の今期利益は「600~700億円の赤字」(寺畑副社長)である。

決算説明会で「今期末(2020年3月期末)の減損リスクは?」という記者の問いに、「期末は期末で精査する。第3四半期末時点では減損の兆候はない」(寺畑副社長)と説明した。だが、鉄鋼業界の事業環境が厳しさを増しているだけに、今期末に減損を迫られるリスクは残る。

鉄鋼大手が苦しんでいるのは、需要低迷にもかかわらず原料価格が高止まりしているため。米中貿易摩擦をきっかけに、産業機器や自動車向けを中心に鉄鋼需要が急速に減少、市況価格も低落してしまった。

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