日産がアメリカで陥った販売不振の深刻度 薄利多売で拡大したゴーン時代のツケは重い
「昨年の初めあたりからずっと販売が落ち込んでいて、来店する客数も目に見えて減った。今日だって土曜日なのに、こんな感じだからね」。全米第2の都市、ロサンゼルス。その東部郊外で営業する日産自動車販売店(ディーラー)の店長は、閑散とした店内を見渡しながら、諦め顔でそう語る。
日産の新車販売が低迷から抜け出せない。今2019年度の世界販売台数は、前年度比5%減の524万台と2年連続で前年を下回る見通しだ。成長を続けてきた中国での販売も減少に転じるなど、すべての地域で苦戦を強いられている。
中でもとくに深刻なのが、最重要市場である米国だ。19年(1~12月)の日産の現地販売台数は前年比9.9%減の134万台と、2年連続で前年割れとなった。米国全需の1.2%減よりはるかに大きな落ち込みだ。同じ日系でもホンダは0.2%増、トヨタ自動車は1.8%減で、日産の不振が際立っている。
ゴーン時代の薄利多売
アメリカの新車市場は2016年ごろまで、リーマンショック後の景気回復の過程で右肩上がりの成長が続いた。日産もカルロス・ゴーン元会長が主導した前回の中期計画(2011~2016年度)で米国シェア10%を目標に掲げ、2011年度の108万台から2016年度には158万台まで販売台数を伸ばした。
その増販を支えたのが、顧客への大幅な値引きを軸にした「薄利多売」の販売戦略だった。ディーラーは自動車会社から支払われるインセンティブ(販売奨励金)を原資に値引きする。日産はトヨタやホンダに追いつき追い越せと、多額のインセンティブを使って台数を積み上げた。1台当たり利益が減っても、台数増でカバーできた。
日産のインセンティブで特徴的だったのが、「ステアステップ(階段)」と呼ばれる特殊なプログラムの存在だ。メーカー側が設定した月次などの目標販売台数を達成すると、その報酬としてディーラーにインセンティブが支払われる。目標達成後には、階段を上るようにさらに設定台数が引き上げられる仕組みだ。
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