日産がアメリカで陥った販売不振の深刻度

薄利多売で拡大したゴーン時代のツケは重い

実は日産は2018年4月に、通常のインセンティブを前月比で2割近く引き下げた。ところが、それでディーラーの店頭販売価格が上がった結果、販売台数が一気に28%も減少し、慌てて水準を元に戻した経緯がある。採算性改善に向け、本来ならステアステップの廃止だけでなく、通常のインセンティブも他社並みの水準に減らしたい。しかし、販売台数が今以上に落ち込むことが目に見えているため、斬り込めないのだ。

それでも、ディーラー側には不満が渦巻く。あるディーラーの販売責任者は、「日産はもっとお金を出すべきだ」と言う。この販売責任者によると、日産車は通常インセンティブの範囲内での値引きではなかなか売れず、店の儲けを削って販売価格を下げているという。「ひどいもんだよ。(競争が激しい小型SUVの)『キックス』なんて、1台売ってもたった100ドルしか利益が出ないんだ」。

日産はなぜ、アメリカ市場でこれほどまでの値引き依存体質になってしまったのか──。即効性のある価格勝負でシェアを拡大する戦略をとり、ブランド力やデザイン・性能など商品力の強化が後回しになったからだ。実際、複数の現地ディーラーは、「日産のブランド力は低く、車のバリューでは売れない」と口をそろえる。

老朽車種では戦えない

アメリカにおける新車ラインナップを見ると、フルモデルチェンジ(全面改良)までの期間が長く、車が高齢化しているのが一目瞭然だ(下図)。モデルが古くなれば、顧客への訴求力は下がる。にもかかわらず、日産が新車開発で後れを取った背景には、2010年代前半にブラジルやインドネシアなど新興国での生産能力の増強に経営資源を振り向け、新車開発が停滞してしまったことがある。

「日産はなかなか新型車を出してくれない。ピックアップトラックの『フロンティア』なんて、15年間も基本的なデザインが変わっていない。これではお客が離れていってしまうよ」。ロス南部で営業するディーラーの販売責任者は、そう不満を漏らす。

フルモデルチェンジまでの期間は、国・地域や車種にもよるが、通常は5~6年程度。これに対し、「フロンティア」は2005年を最後に全面改良しておらず、現行のSUV「パスファインダー」は8年が経過した。2019~2020年に立て続けに全面改良した小型セダンの「ヴァーサ」「セントラ」も、前回から8年を要した。

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