日産がアメリカで陥った販売不振の深刻度 薄利多売で拡大したゴーン時代のツケは重い
アメリカの収益悪化のもう1つの“戦犯”が、レンタカーや企業の社有車などフリート(法人)向け販売への依存だ。レンタカーは買い替えサイクルが個人よりも短く、数千台単位での大口受注も珍しくない。個人への販売より採算は悪いが、日産はシェア拡大のために手っ取り早く台数を稼げるフリートにのめり込んだ。
日産のアメリカ販売全体に占めるフリート比率は20%前後とされ、10%前後のトヨタに比べて突出している。レンタカーは数年後にメーカーが買い戻す契約となっており、フリートが多いメーカーは大量の中古車が一気に市場に出回る。
当然のごとく、中古車相場が崩れ、個人が新車を買い替える際の下取り価格も下がる。「リセールバリューを同じサイズのセダンで比べると、日産車はトヨタ車より約3000ドルは低い」(日産ディーラー)。これが日産車から個人客が遠ざかる一要因にもなっている。
日産は今後、フリート比率を15~17%に下げて収益を改善する計画を描く。その根拠としているのが、2019年から始まった新車攻勢だ。2020年にはアメリカの最量販車であるSUV「ローグ」など複数車種のフルモデルチェンジを予定。値引きではなく、最新技術を前面に出した車の価値で売る方向へ舵を切ろうとしている。
一部の工場閉鎖の検討も必要
しかし、ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹アナリストは、「アメリカ市場が今後縮小して競争が激化していく中、新車を出すから個人販売が大きく改善するという見通しは甘い」と指摘する。個人向けとフリート双方で台数が低迷した場合、アメリカに2つある完成車工場の維持が難しくなる。中西氏は「一部の工場を閉鎖する検討も必要だ。アメリカ国内でシナジーを生める新たな協業メーカーも探さないといけない」と言う。
日産にとって近年の成長柱だった中国販売が鈍化し、新興国で惨敗している現状では、アメリカの再建が日産の行く末を左右する。ただ、長年の安売りで消費者に染み付いた「バーゲンブランド」のイメージは根深い。値引き依存に回帰せず、新車を継続的に開発・投入して車の魅力で売っていくという基本に立ち戻るほかに、ブランド回復への道は残されていない。
スペシャルリポート「日産、米国販売不振の深刻度」のフルバージョンは『週刊東洋経済プラス』で掲載
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