保険金の分割受け取りで「損」してしまう理由 「現在価値」を計算して考えてみる方法がある

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ほかの例も考えてみます。親族があなたの生活をサポートするために、毎年10万円を10年間送金するという約束をしてくれたとします。10年間のトータルでは100万円になります。この10年かけて受け取る100万円(=10年後の100万円)を現在価値にしてみると、いくらになるでしょうか。

10年かけて受け取る総額100万円を、今まとめて受け取るとすると、割引率2%で計算した場合、現在価値は82万348円相当ということになります。逆に言えば、82万348円を年利2%の複利で10年間運用すると、10年後には約100万円になることを意味します。つまり、10年かけて総額100万円を受け取るよりも今100万円を受け取るほうが、将来価値としては高額になり、お得ということです。

お得な生命保険はこうして選ぶ

この考え方を生命保険にあてはめて考えてみましょう。生命保険は、もしものときには高額な保険金を受け取ることになる金融商品です。高額になればなるほど損得の程度も大きくなりますから、生命保険を選ぶときにはしっかり損得計算したいものです。では、次の2つのタイプの生命保険は、どちらが得でしょうか。

(A)自分に何かあったとき、子どもに一括で5000万円が振り込まれる保険
(B)自分に何かあったとき、子どもに毎年500万円が10年間にわたって振り込まれる保険
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この場合、先ほどの考え方をすれば、(A)の一括で5000万円が振り込まれる保険のほうが、将来価値(FV)が高くなりお得ということになります。

ただし、一括でお金を受け取ったときに無駄遣いしてしまうことを懸念して、(B)を選ぶ人もいるかもしれません。

また、保険金を受け取ったときの税金については、別途考える必要があります(契約者、被保険者、保険金受取人のそれぞれが誰かによって支払わなければいけない税金の種類が異なります)。

西村 隆男 横浜国立大学名誉教授、経済学博士

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にしむら たかお / Takao Nishimura

財団法人消費者教育支援センター主任研究員、横浜国立大学助教授、アイオワ州立大学客員研究員などを経て、2000年より横浜国立大学教育人間科学部教授、東京学芸大学連合大学院博士課程教授(兼務)。2017年定年退官、現在は横浜国立大学名誉教授。専門は金融教育、パーソナルファイナンス、消費者教育。消費者教育推進会議会長、日本消費者教育学会会長などを歴任。現在、文科省消費者教育推進委員会委員長、金融経済教育推進会議委員、金融広報中央委員会委員などを務める。著書に『社会人なら知っておきたい金融リテラシー』、『子どもとマスターする46のお金の知識』、『子どものおこづかい練習帳』などがある。

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