日本人の「和牛離れ」も招く大輸出時代の幕開け

アメリカと中国への輸出拡大で起きること

農林水産省によると、国内の牛肉需給そのものは2010年度(85万3000トン)から2018年度(93万1000トン)までで約10%増加した。そのうち、和牛を含めた国内生産量は33万から35万トン前後と変化がないのに対し、輸入量は約2割増の62万トンと国内消費の約6割を占めている。

つまり、牛丼などの外食チェーンの広がりで日本人はここ10年ほどで確実に肉食傾向が強まってはいるが、和牛ではなく安価な輸入牛を消費してきたということになる。

また、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」では、年代別の牛肉1日1人当たりの消費量(平均値)で2011年と2017年を比較すると、60代が約3割増となったのを除き20~50代までは軒並み低下している。20代に至っては約2割、消費量が低下した。

もともと肉食になじみのなかった高齢者層が安価な牛肉を食べるようになったことを考えると「日本人は確かに肉を食うようにはなったが、高齢者が安価な輸入肉を中心に食べて、消費を底上げしてきた」といえるだろう。

和牛は海外富裕層のものになる

もちろん、高級食材としての和牛への需要は確実にある。その担い手は富裕層だ。

国内で消費者離れが懸念されている和牛だが、訪日観光客からの人気は高い。食肉流通統計によると、2018年の1kg当たりの枝肉相場(東京市場、和牛去勢、最高のA5ランク)は10年前の約1.2倍、2818円に上昇している。日本観光で訪れ、和牛を楽しんだ海外富裕層の需要増に畜産業界が熱視線を注ぐのも無理はない。政府も和牛輸出の一環で、すき焼きの食べ方なども輸出することに注力している。

さらに、高価な和牛が海外に売れれば、後継者不足・高齢化が進む畜産業界を助けるという見方もできる。和牛は、海外のように放牧する飼育法ではなく畜舎で細かく面倒を見る必要があり、手間やエサ代がかかるため、人手不足は死活問題だ。海外の富裕層に販路を拡大したいのは当然だろう。

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