日本人の「和牛離れ」も招く大輸出時代の幕開け アメリカと中国への輸出拡大で起きること
2020年は和牛の大輸出時代の幕開けとなりそうだ。
世界の二大消費地であるアメリカと中国において輸出の障壁が取り払われる流れとなり、日本政府だけでなく畜産関係者や食肉卸など業界関係者は色めき立つ。一方で、畜産業界の高齢化や担い手の減少で生産量が追いつかない「和牛不足」が懸念される。国内消費者が高価な和牛を敬遠する傾向も出ており、和牛が海外富裕層にこぞって消費される日も近い。
「米中の窓が開いた。和牛の輸出量は10倍以上になる」――。
ある食肉卸幹部は喜びを隠さなかった。2020年1月から日米貿易協定が発効し、低関税の輸出枠200トンが、最大6万5005トンまで広がる。さらに、牛海綿状脳症(BSE)の影響で2001年に停止した中国向け輸出も約20年ぶりに解禁となる見通しが強まっているためだ。
懸念される日本人の和牛離れ
日本が輸出する牛肉はほぼ全量が和牛。2019年の牛肉の輸出量は過去最大の4339トン(前年比約2割増)で政府目標の4000トンを上回った。それでも、和牛の国内年間生産量が約14万~15万トンであることを考えると、輸出の伸びしろは十分にある。
これまでも輸出が認められてきたアメリカ向けはともかく、輸出が禁止されてきた中国向けはカンボジアなどを経由する「裏ルート」が横行していた。正規ルートが開通すれば、輸出業者が喜ぶのも当然だ。
輸出増への期待が高まる和牛だが、畜産業界で懸念されているのは日本人の和牛離れだ。農畜産業振興機構の調査によると、2018年度の牛肉の小売価格(かた肉、100g当たり)はアメリカ産279円に対して、和牛は809円と2.5倍以上も高い。日本人が敬遠するのも致し方ない。
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