がん患者悩ませる「脱毛症状」は治療できるのか

外見変化に対応するアピアランスケアとは

そこで、「1日でも早く元どおりの自分の外見に戻りたい」と切望していたAさんは、発毛や育毛を専門とする医療機関を自らインターネットで検索して、当クリニックを受診したのでした。

Aさんは「髪がなかなか生えてこなくて悩んでいても、がんの治療をしてくれている主治医にとっては取るに足らないことだろうと思うと、相談しづらくて」とも打ち明けてくれました。

Aさんのように、治療中や治療後に脱毛の不安や悩みを抱えていても、命に関わるようなことではないため、主治医に相談することをためらってしまう人は少なくありません。また、家族や友人に話しても「がんが治ったんだからいいじゃない」「髪はそのうち生えてくるから、待つしかないよ」などと軽い調子で言われ、密かに傷ついてしまうこともあります。

毛母細胞は抗がん剤の影響を受けやすい

がん治療によって起こる脱毛は、抗がん剤やホルモン剤による薬物療法、放射線療法などの補助的な治療によるものです。例えば、抗がん剤はがん細胞の増殖を妨げたり、細胞が成長するのに必要な物質を作らせない、あるいは過剰に産生させてがん細胞の死滅を促す「化学療法」のことをいう場合が多いのですが、発毛の元である毛母細胞は体の中でもとくに細胞分裂が活発に行われているため、抗がん剤の影響を受けやすくなります。

女性特有の乳がんや子宮がんでは、女性ホルモンを調節することによりがん細胞の増殖を抑える「ホルモン療法」を取り入れることがあります。健康な髪に必要な女性ホルモンの割合が変化するため、脱毛が生じるケースも多いようです。

がんの既往歴がある人へ頭髪治療を行う場合も、基本的には薄毛や脱毛で悩む人と同様の治療を行います。ただし、がんを治療中の場合には、まずはがんの治療を最優先にするようお話しします。そして、吐き気がおさまる・免疫力が回復するなど、全身の状態がよくなってから、低刺激な外用薬から治療を始めます。

頭髪治療を開始する時期は、その人の免疫の回復具合やがんのステージ(進行度)などによっても違ってきます。治療の効果にも個人差がありますが、早い人では治療開始から6カ月程度で効果を実感するようです。

先のAさんは、主治医に相談する前に当クリニックを受診したので、私のほうから主治医に連絡をして、頭髪治療を行ってもがんの治療には影響がないことを確認しました。治療方針についても同意を得て、Aさんとも改めてよく話し合ったうえで、頭髪治療をスタートしました。

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