私たちが貨幣に翻弄され「罠に落ちる」根本理由 経済と人間の本質を描ききる「欲望の貨幣論」

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たとえば、私は大学から給料というかたちでおカネをもらっています。その金額は ここでは述べませんが、それは私が行った教育や研究という仕事の対価です。通常は 商品に関して使う「売り買い」という言葉を、貨幣に関しても使ってみると、私は大学から私の仕事と交換に「おカネを買っている」のです。
<中略>おカネそのものには何の使い道もありません。その使い道のないおカネと交換に、缶コーヒーやTシャツやアパートを手に入れるためです。
<中略>私が今おカネを買うのは、自分でモノとして使うためではなく、将来、ほかの人に売るだけのためなのです。つまり、私はおカネが将来もおカネとしての価値を持ち続けることに賭けて、「投機」しているのです。おカネを使うこと――すなわち、それ自体何の使い道もないおカネをおカネとして流通させるという行為こそ、この世の中に存在する「もっとも純粋な投機」であると言えるのです。(同書P107~108)

そして、この「純粋な投機」は、際限のないエスカレーションを起こす。

投機の対象は、自身が消費をするためにあるのではない。つまりそれ自体が欲しいのではなく、将来うまく売れる、つまり交換できそうなものであればなんでもよい。その意味で、最も純粋で象徴的な存在が貨幣である。

貨幣を所有することで、いろいろな可能性を選択できるようになる。無数にある、あらゆる可能性の要不要をすべて検討できないため、貨幣の所有欲は飽和することなく延々と続く。

さらには、今はまだ見えない、遠い将来に出現する便利なものを買うことにも使える。つまり、想像ができないものすら欲望できるのだ。

貨幣は交換のための単なる媒介手段でありながら、それゆえに、皆から果てしなく欲望されるモノとなる(“手段”から、欲望される“目的”へ)。

皆がみな、お金を欲するようになるのはこのような必然がある。

貨幣は人々の欲望を本来的に加速させ、不安定にする

皆がお金を欲するようになることで、実は面倒なことが起こってくる。もし貨幣量に限度があったらどうなるか。貨幣の奪い合いや囲い込みが起こり、流通する貨幣量が減少してしまうかもしれない。

これはケインズの主張する「流動性選好」の極端な例としても紹介されているが、詳しくは経済学の金融論に譲るとして、経済活動がとても不安定になりパフォーマンスの低下を招くことが知られている。

そして、一般的なケインズの理解による流動性選好よりもそれははるかに強力なのだ、と岩井氏は示唆をしたいようである。この考察こそが、岩井氏の長年構築してきた経済学が標準的な経済学と一線を画する重要なポイントとなる。

標準的な経済学は、極端な流動性選好はあったとしても一時的なものだと(そのモデルで)主張する。しかし、岩井氏のモデルでは、それがエスカレートしたまま破綻まで進む可能性を示すが(一般均衡理論 vs. 不均衡動学)、ここでは論が専門的になりすぎるため、話を貨幣に戻すことにしよう。

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