「透明性」確保に危惧、突貫工事の郵政改革
やはり、変ではないか--。日本郵政をめぐる最近の出来事には、そうした印象が一向にぬぐい落とせない。新政権による郵政民営化の見直しはマニフェストと一致したもので、何の不思議もない。しかし、役員刷新など民営化停止措置から派生した数々の事象には、不透明さが漂っている。
食い違う任命責任
「齋藤次郎社長と奥田碩(指名委員会)委員長です」
日本郵政の新経営陣が正式に決定した10月28日夕方、「新役員の任命責任を負うのは誰か」と本誌がただしたところ、大塚耕平内閣府副大臣はそう答えていた。
だが、結論を急げば大塚発言は間違いだった。同日の役員決定プロセスをあらためて振り返るとわかりやすい。
通常であれば、日本郵政の指名委員会が役員候補案を策定したうえで、取締役会で株主総会の招集を決める。そして総会での承認を経て、総務相へ役員選任決議の認可申請を行い、同相の認可をもって役員が正式に決まる。
今回の流れはまったく違っていた。委員長の奥田氏を除く全委員が辞任したことから、指名委員会が機能しなかった。そこで会社法304条に規定された株主提案権に基づき、唯一の株主、つまり、国が候補者を提案し承認。これを受けて原口一博総務相が認可を下している。