「透明性」確保に危惧、突貫工事の郵政改革
株主総会が終了したのは28日午前11時過ぎで、昼に原口総務相が認可しており、異例の決定は束の間の出来事だった。こうした経緯からわかるように、指名委員会の委員長に任命責任がないことは明らかだ。さらに、新社長に選出された齋藤氏にもそれはない。あくまで任命責任を負うのは、株主として人事案を提案し決定した政府であり、その代理を果たした亀井静香金融・郵政改革担当相ということになる。亀井担当相も10日の会見で「任命責任は自分にある」と答えている。
しかし、亀井担当相が4日前の会見で放っていた言葉は実に意外なものだった。
「私は会ったことがない」
新しく日本郵政副社長に就任した高井俊成氏に関する質問への回答である。
週刊東洋経済11月7日号で報じたように、高井氏は旧日本長期信用銀行常務という経歴のほか、一時、架空増資問題で事件化した上場企業の監査役などを務めた経緯もある。そのため、社内外から高井氏の副社長就任を疑問視する声も上がり始めている。
ところが、亀井担当相は「会ったことがない」高井氏を任命したうえ、総務相も瞬く間に認可してしまった。いったい誰が新役員を選出したのか。政府は原点に立ち返って、詳(つまび)らかにすべきだろう。
民主党は8月の衆院選で掲げたマニフェストの中で「郵政事業における国民の権利を保障するため(中略)、郵政事業の抜本的な見直しに取り組む」と明記していた。だが、見直しの手始めである役員決定がこのような始末では、「国民の権利」がどこまで保障されるのか疑わしい。