DeNA「400億円赤字」の先に見えぬ反転戦略 ゲームで巨額減損、期待の新事業も手放す

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だが、決算発表の前日、MOVや関連事業を日本交通ホールディングス傘下のジャパンタクシーと統合することを発表。新会社へのDeNAの出資比率は38.17%となり、2020年度のチェックポイントを前にして連結対象から外れることとなった。累積損失は新会社に引き継がれることなく、DeNAに残る。

DeNAの配車アプリ「MOV」とジャパンタクシーの統合発表会見で、川鍋一朗・日本交通ホールディングス社長と中島宏・DeNAオートモーティブ事業本部長が握手(撮影:尾形文繁)

MOVとジャパンタクシーの記者会見で、DeNAオートモーティブ事業本部長の中島宏常務は、「DeNAの事業には外部資本を入れているものも少なくない。株式のスキームを柔軟に考えながら、事業自体の成功可能性を重視する姿勢は一貫している。今回はたまたま最終的なスキームが完全連結ではなく、持ち分(法適用会社としての)連結になったが、配車アプリサービスを発展させるのに最適なスキームを合理的に考えた結果だ」と話した。

ただ、守安社長の説明は少々異なる。「競合環境は参入時よりも厳しくなり、シェア争いで投資がかさんだ。いち早く展開した神奈川県では高シェアを得たが、マネタイズ(収益化)できる機能の提供が遅れ、収益の見通しが立たなかった。会社全体の損益を意識しての動きかと言われれば、その要素もゼロではない」。

残る手は新規事業でのM&Aか

決算説明の中では、オートモーティブのほか、ヘルスケアやライブ配信プラットフォームの事業などで今年度に100億円規模の赤字が出ているが、MOVなどが連結から外れる来年度は「損益が大幅に改善」するとうたった。要は収益の見通しが立たない事業で、これ以上損失は出せないという判断だったといえる。

その代わりに守安社長が成長事業として強調したのが、ライブ配信プラットフォームの「Pococha(ポコチャ)」と、健康増進アプリの「kencom(ケンコム)」を展開するヘルスケア事業だ。ただポコチャの収入は配信者への「投げ銭」が中心、ケンコムはサービスを活用する保険組合や保険会社からの手数料収入だ。劇的な成長は見込みづらい。

あと残る手は守安社長が「引き続き検討している」というM&Aによる新規事業の拡大だ。現預金は現在860億円を保有しており、「運転資金は250億円ほどで、それを超えた分は活用可能なものだ」(同)。

八方ふさがりにも見えるDeNA。明確な反転戦略は、今はまだ見えない。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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