新型肺炎「日本の対応」は不備だらけの大問題 流行が始まっている前提で動かねばならない

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日本で水際対策が強化されたのは1月中旬だ。約1カ月間、無防備な状態であったことになる。相当数の感染者が日本国内に入ってきたと考えていいだろう。

新型コロナウイルスの感染力を考慮すれば、国内で多数の2次感染が生じたはずだ。

1月28日には武漢からのツアー客を乗せた奈良県のバス運転手、29日にはバスガイドが新型コロナウイルスに感染していたことが判明している。さらに31日にはバス運転手と接触した女性の3次感染が確認されている。

新型コロナウイルスの感染力を考えれば、これは氷山の一角だろう。感染対策の目的を水際対策から、国内での流行を食い止め、死者を減らすことに変更すべきだ。

横浜港に停泊中のクルーズ船で検査結果が出た31人の乗船者のうち、10人から新型コロナウイルスが確認された。船内で広まったのだろう。この事実は、検疫に意味がないだけでなく、乗船者を不要なリスクにさらしていることを意味する。即刻やめるべきだ。

「政府、与党に対する批判かわし」との指摘も

余談だが、厚生労働省もどうやらさすがに検疫に意味のないことはわかっているようだ。厚労省関係者は「中国に対して渡航・入国禁止等の厳しい措置をとれない政府、与党に対する批判から目をそらす役割で隔離や消毒をパフォーマンスしているようにも思われます」と私に話した。これではクルーズ船内で感染した人たちはたまらない。

では、どうすればいいのか。国内で検査体制を整備することだ。つまり、患者が検査を希望する、あるいは医師が必要としたら、すぐに検査できるようにする必要がある。

現在、厚労省は新型コロナウイルスの検査を受けることができる人を、湖北省に渡航歴がある人、あるいは湖北省に渡航歴がある人と濃厚接触した人に限定されている。

2月3日までは、発熱および呼吸器症状があり、武漢市に渡航歴がある人、あるいは濃厚接触した人に限定されていた。このやり方では、今回確認されたタイ人夫婦は診断されない。

政府は「新型コロナウイルスの国内での流行は確認されていない」という趣旨の主張を繰り返しているが、これは不適切だ。正確には「検査をしていないので、どうなっているかわからない」と言うべきだ。

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