日本弁護士連合会が憤激した東京地検の捜索 ゴーン被告の弁護人の事務所に入り鍵を破壊
また、「ゴーン被告と面会した人物の確認はいっさい行っていない、という(事務所側の)説明だった」(斎藤次席検事)と弁護人の管理を暗に批判した。保釈条件では、面会者の氏名と面会日時の記録は義務づけていたが、どんな人物かを確認することを義務づけていない。だが、斎藤次席検事は「弁護団は『保釈中のゴーン被告を指導・監督する』と裁判所に約束していた。その中には当然、面会者がどんな人物かを確認する責任があった」と述べている。
弘中弁護士は家宅捜索のあった1月29日、記者団に対して「事務所で逃亡を謀議したことを裏付ける証拠はない。不愉快だ」と怒りをあらわにした。
法律事務所で鍵を壊したことについて、斎藤次席検事は1月30日の会見で、「弁護人に押収拒絶権があることは認識し、できる限り尊重するということで事務所に向かった。ただ、パソコンの中には拒絶権が及ばないものがある可能性があるので捜索を行いたいと説明した。1時間以上、丁寧に説明した。それでもなお『(ゴーン被告の使用したパソコンが置いてある部屋への)入室を拒む』ということだったので、必要な処分として鍵を解錠した」と説明した。
結局パソコンは押収せず
また、検察が鍵を壊したことが違法ではない理由の1つとして刑事訴訟法111条を挙げた。ここには「差押状又は捜索状の執行については、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができる」と定めている。
もっとも、室内の鍵を壊したものの、”目的”とするパソコンは押収しなかった。「パソコンの中のデータのうち、秘密と認められるものとそうでないものとに切り分けて提出を求めたが、『応じられない』と言われたのでパソコンの押収は控えた」(斎藤次席検事)。
では、何を押収したのか。斎藤次席検事は面会記録を押収したことを認めた一方、それ以外について「1個1個、細かくお答えするわけにはいかない」とした。菊地会長の談話によれば「検察官らが押収に至った物は、弁護士らが捜索の始まる前に任意に呈示していた書面等1袋のみ」である。
面会記録は東京地方裁判所にその写しを弘中弁護士が定期的に提出していたもの。家宅捜索をしてまで押収するほどなのかは疑問だが、斎藤次席検事は「裁判所から入手できるが、それが正しいかどうか確認する必要があった。提出しているもの以外の面会記録があるかもしれないので、それを確認したかった」と主張した。
菊地会長は「違法な令状執行に抗議するとともに、同様の行為を二度と繰り返すことのないよう求める」と談話を締めくくっている。2018年11月のカルロス・ゴーンの逮捕から密出国という事態に発展した今回の事件。前代未聞のケースとはいえ、令状執行と刑事訴訟法111条を盾に、逃亡の証拠探しに強引な手法を使ってもよいことにはならない。日弁連は「刑事司法の公正さを著しく害するもの」としており、東京地検は今回の捜索の正当性を改めて説明すべきだろう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら