「ひきこもり」の9割が外出できるという真実 もっと大変な問題は別のところにある

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内閣府の調査では、過去にひきこもりを経験した人の5割~7割は、3年以内にひきこもり状態から抜け出している。

だが、中には、ひきこもり状態が続く人もいる。その状態から抜け出すのに7年以上かかったという人も1割~2割いる。

そのまま抜け出せていないという人もいるだろう(現在ひきこもり状態にある人のうち、その状態が7年以上続いている割合は3割~4割である)。

誰かとつながることの難しさ

ひきこもりとは言っても、内閣府調査によれば、「家からまったく出ない」という人は1割しかいなかったように、多くの人が直面しているのは、実は家から出ても(学校・会社以外で)誰かとつながることの難しさである。

それには、複合的な事情があるだろう。親の理解のなさや経済的困窮のために、家の外につながるために必要な金銭的なサポートが得られない、学校・会社に所属がない人への偏見などである。

家族以外とのつながりをつくりにくいのは、ひきこもり状態にある本人だけではない。家族も、わが子の状態を自分たちで何とかしなければと「親としての責任」を一身に背負ってしまうように見える。

なぜ、本人も、親も、家族以外につながりを持ちにくいのだろうか。ひきこもり問題の核心は、そして日本社会の息苦しさのひとつは、この家族の孤立(家族以外への頼れなさ)にある。

家族以外に拠りどころがある社会とはどんな社会か。この視点からひきこもり問題を考えることが必要だと思う。

(立正大学准教授・社会学者 関水徹平)

不登校新聞

日本で唯一の不登校専門紙です。不登校新聞の特徴は、不登校・ひきこもり本人の声が充実していることです。これまで1000人以上の、不登校・ひきこもりの当事者・経験者が登場しました。

また、不登校、いじめ、ひきこもりに関するニュース、学校外の居場所情報、相談先となる親の会情報、識者・文化人のインタビューなども掲載されています。紙面はすべて「親はどう支えればいいの?」という疑問点から出発していると言えます。

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