株価がコロナショックから立ち直るのはいつか いま「落ちてくるナイフ」をつかむ必要はない

拡大
縮小

先行き不透明感に対する懸念が高まり、市場にパニック的な動き出てくるような局面では、投資家は実際の経済状況やファンダメンタルズに基づいて行動するわけではない。ひとまず利益を確保、リスクを縮小しようとする動きが強ってくれば、単純にこれまでに大きく上昇したもの、割高感の高いものから売られることになる。今回はSARSの時とは状況が違うという判断は間違っていないが、それは必ずしも強気の見通しにつながるわけではないことは、しっかりと認識しておくべきだ。

では、今後はどのような相場展開が予想されるのだろうか。現時点で新型ウイルスの感染拡大に関しては不透明な部分が多く、ここから先はあくまでも一つの予想として読んでいただきたい。市場の不安はまだしばらく高まり続ける可能性が高く、株価の調整もさらに深まると思われるが、ウイルス感染に関しては、いつまでも拡大傾向が続くわけではない。医療技術や感染拡大防止に関する研究が進んでいることを考えれば、思った以上に早く感染の拡大が収束に向かうとの見方が浮上することも考えられる。

もちろん市場が一番気にするのは、感染の拡大状況ではなく、それに伴う景気への影響だ。今の状況を考えれば1~3月期の経済活動が落ち込むのは避けられず、この先発表される経済指標が一段と悪化するのも必至だ。現在の株価の調整は、感染拡大に対する投資家の不安が、パニック的な売りを呼び込んでいることが主な原因だけに、経済指標に弱気のサプライズが続いている間は、見通しは弱気に傾けておいた方が賢明だ。その後感染拡大に対する不安が後退、景気の悪化にひとまず底打ち間が強まってくれば、一気に買い戻しが集まってくることも考えられる。

FRBの金融政策が、相場底打ちの大きな鍵を握る

その際に大きな鍵を握るのは、やはりFRBの金融政策ということになりそうだ。市場の不安がある程度後退したあたりのタイミングで、新たな緩和策を打ち出すとの期待が高まるようなことがあれば、買い戻しの勢いに拍車が掛かることもあり得るし、逆にこのままバランスシートの拡大を停止、正常な状態に向けて縮小を開始する意向を示すようなことになれば、株式市場に改めて冷や水を浴びせることも考えられる

通常2月の末か3月初めには、年に2回予定されているFRB議長の議会証言が行われる。3月17~18日には次の米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合が開かれる。足元の価格調整の流れが止まることがあるとすれば、この前後のタイミングとなるのではないか。一番の問題は、それまでにジェローム・パウエル議長が追加緩和を決断できるのかどうかだが、もしそれまでに事態が深刻となり、株価の調整に歯止めが掛からないようであれば、可能性は十分に高いと見て良いだろう。

松本 英毅 NY在住コモディティトレーダー

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まつもと えいき / Eiki Matsumoto

1963年生まれ。音楽家活動のあとアメリカでコモディティートレードの専門家として活動。2004年にコメンテーターとしての活動を開始。現在、「よそうかい.com」代表取締役としてプロ投資家を対象に情報発信中。NYを拠点にアメリカ市場を幅広くウォッチ、原油を中心としたコモディティー市場全般に対する造詣が深い。毎日NY市場が開く前に配信されるデイリーストラテジーレポートでは、推奨トレードのシミュレーションが好結果を残しており、2018年にはそれを基にした商品ファンドを立ち上げ、自らも運用に当たる。ツイッター (@yosoukai) のほか、YouTubeチャンネルでも毎日精力的に情報を配信している。

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