株価がコロナショックから立ち直るのはいつか いま「落ちてくるナイフ」をつかむ必要はない
一方で新型ウイルスの感染拡大によって世界経済が深刻な打撃を受け、アメリカも景気後退に陥ってしまうとの懸念は、現時点では単なる予測に過ぎない。先月30日に発表された米2019年10~12月期のGDP速報値は前期比2.1%増加、2019年通年では2.3%の増加となった。
仮にアメリカ景気がこの先減速し、2四半期連続でのマイナス成長という景気後退に陥るのだとしても、それがデータ上で確認されるのは早くても4~6月期の速報値が発表される7月末の話である。一方でアメリカ経済は中国の需要に対する依存度が低く、景気への影響も限定的なものにとどまるとの見方もある。この先も景気の先行きに関してはさまざまな情報が交錯、投資家がそれに一喜一憂する状況も続くことになるのではないか。
今回の新型コロナウイルス感染拡大を、2002年11月から2003年前半にかけて拡大した重症急性呼吸器症候群(SARS)と比較する意見も多く聞かれるが、これもナンセンスだ。もちろん過去の事例はしっかりと研究、参考にすべき部分は大いに参考にすべきだが、ひとことでいうと今回とは世界経済を取り巻く状況があまりにも違うため、比較にならない。
過去の例を取って将来を予想するのは、妙に説得力があるためによく用いられる手法ではあるが、中国経済が世界全体に占める割合がはるかに大きくなったことと、当時とは中銀の金融政策がまったく異なっているという2点だけを見ても、比較にあまり意味がないのは明らかだ。
感染拡大の強さや致死率など、医学的な分野では比較も成り立つだろうし、過去の経験が役立つこともあるかもしれない。だが、私はその筋の専門家ではないし、ここでの言及は控えておくが、少なくとも経済や市場に対する影響に関しては、無理に過去との比較を用いて将来を予測するべきではない。現在実際に足元で起こっていることと、今後起こるであろうことに基づいて、あくまでも現状に照らし合わせて見通しを立てる必要があると考える。
ポジション調整加速時に売られるものとは?
特に以下のような予測には十分な注意が必要だ。すなわち「2003年当時は、2001年の「911テロ」の影響から完全に抜け出せておらず、経済を取り巻く状況がかなり悪かった。だからSARSによって株価は大きく下落した。だが、今回の場合経済は依然として良好であり、中銀の金融緩和によって市場がしっかりと下支えされているから心配はない」というものだ。
こうした楽観論にはあまり根拠がない。当時は株価の下落が続き割安感が強まる中、これ以上売り物が出てこない状況だったにもかかわらず、SARSによってさらに株価が下落したと考えることもできる。今回は米連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシートの拡大再開などによって投機資金が米株式市場に流入、史上最高値の更新を繰り返している最中での話である。相場には十分過ぎるほど「買われ過ぎ感」が高まっているし、これまでの上昇局面で十分な利益を享受した向きが利益確定に走れば、調整余地もかなりのものになるだろう。
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