断罪された新興企業、有力企業との見えない壁

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日興とIHIの粉飾決算は課徴金で決着、上場も維持

とりわけ日興コーディアルの虚偽記載は、ライブドア事件のすぐ後で、証券会社による証券犯罪だけに、金融庁や東京証券取引所も強い態度で臨むのではないかとみられたが、当局の判断は緩やかなものになった。日興、IHIとも、刑事訴追はされず、課徴金の支払いという行政処分で決着。検察の出番はなく、逮捕者は一人も出なかった。ライブドアを上場廃止にした東証も、日興、IHIともに上場維持の判断を下した。

粉飾決算によって、株式市場を欺いた点は、三つの事件とも同じ。日興、IHIがごまかした金額はむしろライブドアより大きい。

ライブドアが多用した100分の1の株式分割や投資事業組合(ファンド)を使った株式交換などの手法は、早い段階から脱法的行為だと指摘されていたが、05~06年当時、法的にはグレーゾーンだった。堀江被告が罪に問われた買収企業の資産価値の過大計上も、評価手法は複数あって絶対的な物差しはない。

本来こうした行為には、検察より先に、証券取引等監視委員会が適切に指導し、ルールを示すことが求められた。監視委が市場の監視者として十分な対策をとらない間に、東京地検特捜部が捜査に着手。監視委や金融庁も、刑事事件になるに及び、ライブドアに厳しい姿勢で臨んだ。

経済評論家でオフィスワクワク代表の保田隆明氏は、「上場廃止などの重い処分は、株主だけでなく下請け企業や取引先にも影響する。新興のライブドアと違い、日興、IHIのケースではそうした影響も考慮されたかもしれない」と推測する。

検察庁がなぜライブドアを立件したのか。当時の特捜部長は就任時の記者会見で、「額に汗して働いている人々や働こうにもリストラされて職を失っている人たち、法令を順守して経済活動を行っている企業などが出し抜かれ、不正がまかり通るような社会にしてはならない」と語っている。検察が市場への監視を強めていたとき、ライブドアは市場の秩序と規律を乱す、巨悪に見えたのだろう。

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