20代の頃から結婚願望が強く、積極性も同棲経験もあるが「良縁」には20年以上恵まれなかった男性がいる。昨夏に念願の結婚を果たしたエンジニアの藤田治夫さん(仮名、48歳)だ。
取材依頼をすると二つ返事でOKしてくれ、妻の三貴さん(仮名、41歳)も同伴してくれるという。しかも、ワイン会で知り合った2人の初デートの場所を指定。東京・恵比寿にある「ワインバーM」だ。
「ワイン愛好家には有名で、テイスティングにも利用させてもらう店なんです」
「治夫さんに初めて連れて来てもらって、すごく楽しかったです。グラスワインがたくさんあって料理も美味しい。完璧!と思いました」
初デートの感動を思い出しながら体を寄せ合う2人。出会ったのは昨年5月のワイン会で、翌月には婚約したらしい。大人の決断力に富んだ晩婚さんにはスピード婚が多いが、それにしても速い。この店の名物だというカンガルーヒレ肉のグリルに赤ワインを合わせながら、それぞれの生い立ちと結婚観について聞いていこう。
安心できるパートナーを求める気持ちが強かった
九州出身の治夫さんはつらい幼少期を過ごした。3歳のときに父親が他界し、母親には育児放棄をされ、母方の祖母に育てられたという。その祖母にもあまり余裕はなかった。
「18歳までは何とかするのでそれから先は勝手に生きてくれ、と言われました」
高校卒業後は好きな機械関係の仕事に就いた。月250時間以上のペースで働き続け、残業代を含めると年収は1000万を超えるようになった。転職を重ねるたびにキャリアをアップし、通信制の大学に通って大卒の資格も得た。そして、家族愛に恵まれなかった分だけ安心できるパートナーを求める気持ちが強かった。
「グレてもおかしくない環境だったのに、治夫さんは偉いね」
隣の三貴さんが感想を述べる。褒められた治夫さんは少し嬉しそうだ。
「いや、ここでグレたら終わりだと思って頑張ったよ」
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