米大統領選始まる、「トランプ勝利」は五分五分 民主党候補はバイデン前副大統領が優勢

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――誰が最終的に民主党候補の指名を獲得するでしょうか。

バイデン氏がやや優勢とみている。ただ、同氏には国民を鼓舞するような物語がない。上院議員を30年以上、副大統領も8年やり、半世紀近くワシントンにいた。それは経験だが、利権にまみれたワシントンの変革者といったストーリー性に欠ける。

――全米の世論調査では、バイデン氏とトランプ氏が本戦で戦った場合、バイデン氏が優勢となっています。

渡辺靖(わたなべ・やすし)/1967年生まれ。専攻は文化人類学、文化政策論、アメリカ研究。上智大学外国後学部卒業後、1992年ハーバード大学大学院修了、1997年Ph.D(社会人類学)取得。著書に『アメリカン・コミュニティ』『リバタリアニズム』など(記者撮影)

バイデン氏は中道派で激戦州の中西部に強いため、トランプ氏にとって最も手ごわい相手だ。ただ、まだ本戦まで9カ月あり、世論調査は当てにならない。過去に再選を狙って負けた大統領は景気後退期であり、今の景気や株価が続けばトランプ氏に有利に働く。現段階では五分五分だと思う。

民主党陣営の戦術は、トランプ氏は「アメリカの民主主義に対する脅威」だと言って同氏の信任投票にすることだ。加えて、環境や銃規制、移民問題などで大統領批判票を掘り起こそうとしている。

逆にトランプ氏は9割といわれる共和党内の支持を固め、必ず投票に行かせる戦術。無党派層や民主党層を無理に獲りにいくのではなく、前回大統領選で投票に行かなかった約4割の国民から票を引き出そうとしている。

民主党に勝機が訪れている

――民主党内の中道派と左派は結束できるのでしょうか。

「トランプ打倒」で党内が団結する必要がある。加えてカギになるのが副大統領候補。地域、ジェンダー、人種などのバランスをどのようにとるか。バイデン氏の場合、黒人女性政治家のエイブラムス氏やハリス上院議員らが副大統領候補として挙がっている。

――本戦でのカギとなる激戦州の情勢をどう見ますか。

ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシン、アリゾナ、フロリダなどではトランプ氏が劣勢にある。2018年の中間選挙でもミニトランプ的候補が苦戦していた。民主党にとっては勝機だ。

米中貿易戦争の影響が農家や製造業に出ている。トランプ氏は激戦州でのテコ入れのために、日本や中国への農産物輸出を拡大し、日本やヨーロッパに対して自動車で妥協しない姿勢をとっている。現職大統領として初めて、人工妊娠中絶に反対する集会で演説したのも、激戦州に多い宗教保守派の支持基盤を固めるためだ。

――ウクライナ疑惑をめぐる弾劾裁判に関し、キリスト教福音派の有力誌がトランプ氏の罷免を主張するなど、岩盤支持層の造反も見られます。

その社説に対する福音派からの反発も猛烈にあるが、トランプ陣営としても支持層の一枚岩を何とか維持しなくてはならないという意識は強い。人工妊娠中絶の反対演説や、(今回の中東和平案を含めて)イスラエル寄りの政策も福音派の支持離れを抑える狙いだ。

弾劾裁判の影響については、トランプ氏のダメージには多少なっても現状では罷免の可能性は低く、大きな影響にはならないだろう。ボルトン氏(前大統領補佐官)らの証人招致も否決されたことで、裁判は(無罪で)事実上終わった。

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