自筆遺言を「偽物」と言う母と家族を襲った悲劇 認知症の母が原因でバラバラになった家族

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春美さんはため息をつきながら、妹たちに悪態をつきました。春美さんの態度に怒りを抑えきれなくなった奈津美さんは一気にまくしたてました。

次女:「このところ、お姉ちゃんちは、ご主人が定年になったにもかかわらず、自宅をリフォームしたり、海外旅行へ行ったり、ベンツを買ったり、羽振りのいい生活をしていると思ってたのよ。この取引明細書見てピンときたわよ」

長女:「バカじゃないの、あんた。そんなもん夫の退職金を使ったからに決まっているじゃない」

次女:「そんなの信じられるわけないじゃない。私の夫だって退職金もらったけど、年金だってあてにならないのに、そんな羽振りよく使えるわけがないでしょ。そんなウソが通用すると思ってるの?」

もはや解決の糸口は見えない

姉妹の言い争いはエキサイトしていきます。仲良しだった姉妹の「争族」には、もはや解決の糸口は見えなくなりました。今回の事例のように、同居の親族が金融機関から生活費をおろしてくる際に現金を着服する例は枚挙にいとまがありません。

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よほど強力な使い込みの証拠が出てこない限り裁判で勝つのは難しいでしょう。「親の承諾なく(勝手に預金を引き出した)」という点を主張立証するため、「当時の親は事実上の認知症だった」と主張する手もありますが、これも診断書などがなければ正確に立証することは難しくなります。

相続に関することは、自分たちだけで判断が難しい複雑な事情が絡んでいることが多く、専門家に相談したほうがいいと思います。ただ、気を付けたいのは、相続は多岐にわたる知識が必要だということ。

ありがちなのが、知り合いの税理士に相談するケースですが、税の知識だけでは正しい判断は下せません。税と法律、両方に精通しているプロフェッショナルに相談することが重要です。

江幡 吉昭 一般社団法人相続終活専門協会 代表理事

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えばた よしあき / Yoshiaki Ebata

1999年大学卒業後、住友生命保険を経て、英スタンダードチャータード銀行に入行。2009年、資産家の税務・法務・財務・資産運用の専門家集団を束ねるファミリーオフィスを設立し、主に相続・事業承継等の問題を顧客側の視点で解決。現在は、株式会社アレース・ファミリーオフィス代表取締役、アレースグループ代表。また、一般社団法人相続終活専門士協会を設立、代表理事を務める。著書に『資産防衛の新常識』(幻冬舎)など。

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