「新型肺炎ショック」iPhone生産に広がる暗雲 店舗は一部閉鎖、メーカーの操業再開に遅れ

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スマホに使われる電子部品メーカーの業績も懸念されつつある。受託製造各社の生産量が落ち込んだ場合、スマホに使用される電子部品の需要がおのずと落ちるためだ。

iPhoneをはじめとした各社のスマホには、カメラ部品やバッテリー、コンデンサーなどに日系電子部品メーカーの製品が使われている。すでにアップルの主要サプライヤーである村田製作所やTDK、アルプスアルパイン、太陽誘電、日本航空電子工業などの株価は1月27日以降、前週比一段安で推移している。

米中摩擦が激化して部品の輸入ができなくなることに備え、ファーウェイは電子部品の在庫を大量に抱えているとされる。前出の台湾系EMS関係者は「ファーウェイ向けの部品在庫が大量にある中で、新型肺炎によって工場の生産調整が行われたら、電子部品の需要は減少する可能性がある」と指摘する。

コンデンサーを生産する電子部品メーカー幹部も「例年起きていたiPhone販売不振であれば、ファーウェイなどほかのスマホメーカーへの供給増で生産調整の影響を緩和できたが、中国にある複数メーカーのスマホ製造そのものが止まってしまうと需要減の影響が直撃する」と懸念を示す。

生産面の影響は小さいとの声も

その一方、新型肺炎が広がるまでは、旧機種を中心にiPhoneの販売は堅調で、新型肺炎の拡大で生産に影響が出たとしても大きな問題にならないという声も出る。台湾のEMSメーカー関係者らは「iPhoneの生産調整は毎年あるから、大きな打撃はない」「生産調整の理由が販売不振から新型肺炎に変わっただけ」と口をそろえる。

たしかに、3年前は10万円以上した高級機種のiPhone Xの販売不振が起き、1~2年前も新モデルが想定以上に売れず、アップルが業績下方修正を余儀なくされるなど、当初計画からの生産調整は日常茶飯事だった。

「最悪の事態は工場内で連続的に集団感染が発生して、従業員のシフトが回せなくなり、長期間操業できなくなること」(鴻海精密工業の関係者)というように、感染拡大を防いで、工場の生産機能が崩壊しないことに各社の重点が向き始めている。

1月30日から本格化した2019年10~12月期の決算。各社が新型肺炎の影響と今後の見通しについてどのような説明をするのかに注目が集まっている。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

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