低迷する漫画業界の大問題、制作現場のワーキングプア

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 中村さんは漫画家が得る報酬について、その労力に見合った適切なものではないと考えている。「一人で描いて暮らすのがギリギリ。漫画家の生活苦を美談だと思っている人さえいる。ビジネスとして漫画をとらえている人が少ない」と嘆く。それでも「暮らしがボロボロになるよりも、漫画がボロボロになるほうがつらい」と気力を振り絞る中村さん。「今しっかり動かないと、良質な漫画をたくさん出していくシステムが壊れる」と危機感を募らせている。

編集者もピンからキリまで存在する。だが中村さんは、あくまで良識ある編集者の実績につながるような仕事をしていくことで、漫画ビジネスを支えたい、という。

前出の江上IKKI編集長によれば、原稿1枚当たり1万円台がほとんどで、2万円以上もらえるのはほんの一握りのベテランだけ。中村さんの一件は氷山の一角で、経営難に四苦八苦する漫画家は多い。角川書店の井上社長も、「従来の週刊漫画誌のような、アシスタントを多用し量産するのが前提の体制だと、漫画家の生活は厳しくなる」と語る。

新たな漫画マーケットを切り開こうと試行錯誤する出版社。その最大のカギが良質な作品であることは、すべての関係者の一致するところだ。であるならば、漫画の制作現場をジワジワ覆い尽くすワーキングプア問題の解決に着手しないかぎり、真の漫画活性化は進まない。

(小林拓矢 フリーライター 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済)

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