低迷する漫画業界の大問題、制作現場のワーキングプア



 江上英樹編集長は、「IKKIはもともと小さいところから始めた雑誌。小所帯だからできることがある。だからここは、漫画でできることの先端研究所」と自負する。が、現実はやはり難しい。「部数が増えても赤字。仮にIKKIが10万部でも儲からない」と江上氏は明かす。

IKKIの雑誌単体では、07年度は2億5000万円の赤字だった。一方、掲載作品を単行本化したコミックスのほうは年間3億5000万円の黒字を出している。編集者たちが評価する漫画を発表する場として、赤字を出しつつ雑誌を作り、コミックスで回収してきた。ただし同誌も、翌08年度はトータルで黒字に乗せることはできなかった。

「月刊誌は週刊誌に比べて丁寧に描く。そして単行本でまとまった際に手元に置いておきたくなるような作品を作る。最近の傾向では、月刊誌のほうが一般にはヒット作が多い」と江上氏。同誌で連載された『ぼくらの』(鬼頭莫宏作)は、1巻目が20万部で、これまで10巻計100万部程度売れたという。

今後目指すのは「同人誌と商業誌の中間に位置するようなコミックス」(江上氏)。それは、既存の制作システムの中で埋もれていた作品、たとえば同人誌に埋没する良質な作品を掘り起こし、販売店を限定するなど、少部数に見合った設計をして出版していくという試みだ。

またIKKIでは、作成された漫画原稿をすべてデジタルデータ化し、北米で無料で読めるウェブサイトを構築している。「これが(『週刊少年サンデー』などの)大部数漫画誌だと市場への影響などに配慮しなくてはならず、実現が大変」(江上氏)なのだそうだ。


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