低迷する漫画業界の大問題、制作現場のワーキングプア



後発の角川書店はオタク重視戦略

編集部の人員管理でも、独特の方法を取っている。編集長とデスク以外は全員業務委託の編集者。編集部常駐の編集者と、常駐はせず、その代わり作品の面倒を見る編集者がいる。全員正社員という従来のやり方よりも人件費が圧縮できる。

だがこれにはコストカットだけではなく、ポジティブな理由もある。「サンデー系列の雑誌とビッグコミック系列の雑誌がある小学館では、編集するのが社内スタッフだと、それぞれの伝統的なものが身に付いてしまっている。新しい人を外部から入れ、文化圏が違うものを作る」という狙いだ。IKKIでは雑誌掲載作品の末尾に担当編集者名を記している。不振にあえぐ大手の内部で、現状打破を懸けた実験が進んでいる。

一方、漫画ビジネスで後発の角川書店のコミック。そこにはある共通点が見られる。それは一般的な読者というより、オタク層に的を絞っていることだ。それが的中してか、同社のキャラクタービジネスの成功は、業界で数少ない明るい話題だ。

井上伸一郎社長は、「雑誌を売ろうとした結果、キャラクターが売れるようになった。キャラクター先行ではない。まずは作品内容の充実ありき」と語る。追う立場の角川がいかに大手に対抗していくか--。その策の一つが、自社やグループ企業内で作品やキャラクターを盛り上げ相乗効果を高めるという作戦だった。そのすべての源泉は、結局、作品の質にあるというのだ。

ちなみに同社の場合、一つの作品・キャラクターが漫画部門やライトノベル部門といった複数の部署で担当されており、キャラクターごとの評価もしている。社内の賞などは担当者個人にではなく、作品のプロジェクトチームごとに出す。売り上げは、当然ながら部署ごとだけではなく、作品ごとでも算出しているが、そのデータは公開していない。作品やキャラクターを横断的に展開する、漫画ビジネスで培った手法を「一般文芸などでも、普及させる」と井上社長は語る。

近年、漫画業界を揺さぶった出来事の一つに、作者側が出版社に対して批判的な態度を表明するようになったことがある。佐藤秀峰氏が出版社との過去の確執をネット公開した件は、広く世間の注目を集めた。

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