岐路に立つジュピターテレコム(JCOM)、CATV王者の市場をNTTが侵食


 CATV会社は電波が届かない難視聴地域へ、ケーブル経由の「再送信」という形で地上波放送を提供し、一定の加入者を確保してきた経緯がある。だが、法改正により、地上波放送の再送信が認められなかった通信事業者でもそれが可能になった。結果、多チャンネルを必要としなくなった加入者がフレッツ・テレビへ乗り換える。これまで放送を足掛かりに電話やネットのセット販売を展開してきたCATV会社が、今度は逆に利益源である有料放送の顧客を丸ごと奪われかねない立場に立たされたわけだ。

ネットが「主」で放送が「従」のNTTとはビジネスモデルが異なるだけに、真っ正面から対抗すれば、中核に据える有料多チャンネル放送の位置づけが中途半端になる。そこで、JCOMが今年6月に始めたのが「地デジパック」というサービスだった。価格はフレッツ・テレビのセットサービスと同等に設定し、対象者はあくまで「解約を申し出た加入者」というから、NTT対策であることは明らか。新規でも加入できるがほとんど宣伝していない。要は、NTTへの流出を止める“防波堤”のような位置づけで、「なりふり構っていられない」(加藤取締役)。

こうした価格戦略の一方、営業体制の改編も進めている。7月には同社の強みだった各家庭を回る地域密着型の訪問営業員を2300人から1割強削減。約300人を全国の営業・アフターサービスの拠点「ジュピターショップ」などに配置した。これまで手つかずだった家電量販店での販促活動を開始するなど、「どぶ板」スタイルから転換を急ぐ。

11月には、訪問営業を中心とする直接営業と、その他の営業チャネル開拓を進める部門とを分割した。営業戦略を練る「営業改革会議」も設置し、これらを統括するケーブルTV事業部のトップに森泉社長が就任。自らが陣頭指揮を執る体制へと刷新した。競合の勢いが強まる中、JCOMはこの難局を乗り切れるのか。これからが正念場となる。

(中島順一郎 撮影:今 祥雄 =週刊東洋経済)

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