開成の入試問題に「大江戸線」が出題された意味 直前に暗記で詰め込んでも太刀打ちできない
1955年から始まった高度経済成長によって東京に人口が集中し、郊外にもたくさんの家が建てられるようになりました。そうすると鉄道網で輸送力を強化する必要がでてきます。練馬区の光が丘再開発計画がきっかけで、そこにも鉄道が必要だということになりました。
しかし、石油危機や都の財政問題、そして人口が郊外に移動するドーナツ化現象によって大江戸線の建設が見合わされた時期もあり、ようやく1991年に練馬・光が丘間で開通します。その後1997年に新宿・練馬間を開通。全線が開通したのは2000年というように段階を踏んで開通してきました。
さて、この大江戸線の建設は単に旅客輸送だけではない目的があります。大江戸線の麻布十番駅と清澄白河駅には、緊急時用の東京都の防災物資を保管する倉庫である、防災備蓄倉庫が設けられています。もし災害時に地上の道路が使用できない場合、地下鉄を利用して物資を輸送することを想定しているのです。光が丘駅の近くには、自衛隊の練馬駐屯地がありますから、非常時の自衛隊員の移動にも役立てることができるのでしょう。
開成の入試問題から、東京の文化を学ぶ
また、大江戸線は地下深くにあるため、天災の影響を受けにくいという利点もあります。台風で、JRや私鉄の運行が停止しても、東西線や丸ノ内線といったほかの地下鉄が止まっても、大江戸線は通常どおりだということはよくあるのです。
以上、開成の「東京問題」を紹介してきました。中学受験指導を行う立場としては、配点が高いわけではないので、これらの問題のために受験勉強の多くの時間を割くのはもったいないという思いもあります。
入試で重箱の隅をつつく問題が出されると、対策する側もより細かく、よりマニアックに用語を覚えさせようとする傾向があり、結果として暗記偏重になりがちです。
一方、自分が住んでいる地域について知ることも大切な勉強です。開成の入試問題からそのようなメッセージを読み取ることができます。直前期に詰め込むというより、小学生のうちから東京の街並みを散歩するなかで気づくことが理想と言えるでしょう。
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