しかし、もし日銀が制御できない外的要因が変わらなければ、金融政策は現状維持が続く枠組みでもある。筆者は日本経済は2018年後半から景気後退局面に入ったと判断しているが、2019年10月の消費増税で10~12月は大幅なマイナス成長となったことを多くの経済指標が示している。一方、現在の日銀は、経済成長とインフレの低下に対して、「傍観するだけ」の存在となっているようにみえる。
もちろん、日銀の一部の審議委員からは、拡張財政政策とのポリシーミックスが必要であるとの見解が示されている。ただ、プルーデンス政策(システムリスクの抑制などを目的とした政策)が重視されているとみられ、現在の成長率下振れに対して、日銀が大胆な金融緩和を強化させる可能性は極めて低い。
そうなると、日本側の要因として、仮に経済成長率を高める財政政策の発動によって国債発行が増えれば、金融財政政策がいずれも景気刺激的に作用するだろう。インフレ率が2%目標に程遠くゼロ%台の低水準となっている日本経済は、総需要不足であるため、景気刺激的な財政金融政策の効果が期待できる。
日本の政治が「無視できないリスク要因」に
ただ、2019年12月30日配信のコラム「2020年の日本経済が長期停滞から脱せない理由」などでも述べたが、2020年度の政府による当初予算を踏まえると、今後は政府歳出の伸びが抑制される一方、家計への増税負担が高まる緊縮財政になるだろう。
このため国債発行は減少して、日銀の国債購入拡大もせいぜい現状維持のペースを保つ程度と予想する。結局、日本経済の正常化と2%インフレ実現は、「トランプ政権率いるアメリカ頼み」ということになる。こうした経済政策運営が続いていることは、官邸だけではなく、与野党の政治家の経済動向への関心が薄れ、「安倍政権後」を見据えた政局に多くの政治家の関心が移っていることも大きいだろう。オリンピック・パラリンピック以降には総選挙が行われるとの観測が増えているとみられる。
筆者には今後の、政治情勢を正確に展望する知見ははない。だが、2018年以降の日本の経済政策運営は、「ベーシックな経済理論を軽視した」緊縮政策となっており、その弊害のリスクは無視できないとみている。市場関係者のほとんどが意識しているアメリカ政治に起因するリスクと同様に、日本の政治情勢が金融市場の無視できないリスク要因になりうると考える。これらを踏まえると、2020年に日本株がアメリカ株をアウトパフォームする事は難しいだろう。もっとも、2017年のようにアメリカ株と同程度に上昇する可能性はありうるだろう。
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