「さよならテレビ」 が暴いたTV局の深すぎる闇 悪いのはテレビ業界か、それとも視聴者か

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即戦力はほしいが、若手育成も組織の基盤として必要。しかし20代が居つかないのがオールドメディアの宿命……、そんな悩みを肌で感じさせたのが若手新人記者・渡邊雅之の奮闘だった。

デフォルト笑顔で、よく言えば愛嬌があるものの、「期待の新人」とは言いがたい。人名の読み方を間違えるわ、顔出しNGの取材対象者の映像を出そうとするわで、言っちゃなんだけど、根本的に報道に向いていない印象。それでも怒られながら成長していく姿を追うと思いきや、1年で「卒業」を言い渡される。彼は制作会社からきた派遣社員だったのだ。

映像の中にもあったが、「卒業なんてきれいごとですませていいのか」という意見もある。確かに難ありだが、本人は続けたい意志をもっていた。問題は「若手を育てる余裕がない」ことにある。ただでさえ時間も人員も足りていない状況で、さらに「働き方改革」のあおりを受け、残業禁止令も発令。有能とは言いがたい若手を手取り足取り優しく育てる余裕など、ない。

逆に、テレビ局の人から聞いた話を思い出した。「20代の子はGW明けが第1関門。4月に入ってきて、仕事のイロハを丁寧に教え、GW明けると会社に来なくなって辞める」という。この繰り返しで、若手は育つどころか根付かないそうだ。使えない・居つかない。テレビ局に限ったことではないが、実に悩ましい問題である。

忖度・迎合・問題意識のなさ

そして、ベテランの契約記者・澤村慎太郎の憂い。柔和な笑顔で「Z案件」をこなす。Zとは「是非ネタ」、つまりスポンサー絡みのヨイショネタのこと。「抵抗はないです」と言いつつも、実は権力の暴走には危機感を抱き、つねにアンテナを張り巡らせている、気骨ある記者だとわかる。

撮影当時、国会で審議されていた「共謀罪」につながるネタを澤村がまとめたものの、本放送では政府が名付けた「テロ等準備罪」の文言で統一されてしまった。危機感や問題意識をもつ人がここ(報道局)にはいない、と漏らす澤村。権力に迎合する報道姿勢に、憂いと憤りを感じているのだ。

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