麻生氏「単一民族」発言がONE TEAMとは遠い訳 多文化の認め合いと閉鎖性はまったく逆の話だ

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私事になるが、筆者は大学生のときにニュージーランドにいたことがあって、ちょうどそのときにパブのテレビでラグビー日本代表対オールブラックスの試合を見たことを覚えている。

1995年6月のその試合は、第3回ワールドカップの予選で、日本は17対145という歴史的な大敗を喫した。試合が行われた南アの街の名前をとって“ブルームフォンテーンの悲劇”と呼ばれているそうだが、店中のニュージーランド人に肩をたたかれて慰められたのは今となってはいい思い出だ。

だが、この四半世紀で、日本代表は劇的に強くなった。皮肉なようだが、この四半世紀で弱体化した日本経済とは逆のベクトルだ。

劇的にバージョンアップする日本

日本代表が強くなったのは、海外にルーツを持つ選手と日本人選手が互いの長所を引き出しながら「ワンチーム」としてうまく融合したからだろう。

ラグビーはほかの多くのスポーツが採用する「国籍主義」ではなく「協会主義」を採用している。ちなみに、以下のいずれかの条件を満たせば、その国の代表選手になれる。

①本人が当該国で生まれている
②両親、または祖父母のうち1人が当該国で生まれている
③本人が当該国に3年間以上住み続けている(2020年からは「5年間以上」に変更)

ラブスカフニ選手は、2015年にイングランドで開かれたワールドカップでの日本の闘いに魅了されて日本に来たのだという。これからの日本が目指すべきは、ラグビー日本代表のように魅力を海外にどんどんと発信して、「日本で勉強したい」「日本で働きたい」と思った外国人たちが暮らしやすいような環境を整えることではないだろうか。

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日本の将来にとって、何より大切なのは、外国人と日本人が互いに歩み寄り、「ワンチーム」としてよりよい日本を作っていくことではないだろうか。

もちろんチームが1つになる過程ではいろいろな摩擦が起こるだろうし、戦前の全体主義や国粋主義、言語統制のようなあり方と結びつけてもいけない。

そのためにはさまざまな法整備をしていく必要がある。このあたりのことは拙著『となりの外国人』にも詳しく書いたが、多くの失踪者を出している技能実習制度は、制度の存続を含めてまだまだ議論が必要に思えるし、外国人や外国にルーツのある人たちの教育の問題もある。

でも、大きな可能性があるように思えてならない。筆者自身、これからも、「となりの外国人」との関わり方を考えていきたいと思うし、ラグビー日本代表と同じように多文化共生の力で劇的にバージョンアップした日本も見てみたい。

芹澤 健介 ライター、編集者、構成作家

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せりざわ けんすけ / Kensuke Serizawa

1973年、沖縄県生まれ。横浜国立大学経済学部卒。NHK国際放送の番組制作にも携わる。長年、日本在住の外国人の問題を取材してきた。著書に『血と水の一滴 沖縄に散った青年軍医』、共著に『死後離婚』などがある。

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