当事者が語る「毒親」と「じゃない親」の境界線 「毒親だった両親」に54歳女性が求めたこと

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佐藤さんが感じていた生きづらさは、母親だけに原因があるのではない。父親もまた気分屋で、気難しい人だった。その時々で言うことが違うからだ。父親の発言に振り回され、神経を消耗した。両親は仲が悪く、ささいなことでけんかしたが、「子どもは親に対して従順であるべき」という点では共通していたという。

両親を「毒親」と呼ぶことに罪悪感があるという(筆者撮影)

「10代になると反発心も出てきて、親の言うことにふてくされたり、黙ったり。大学に入ると付き合いも広がり、急に飲み会に誘われることもある。帰宅が遅くなるときなどは、いつも言い訳を考えて気が重かった。でも、友人の中には、親に遠慮せず自由に行動する人もいて驚きました。友人に『あなたの親、ヘンだよ』と言われ、このとき初めて『自分の親は普通じゃないんだ』と気づいたのです。

また、両親は服装にも口うるさく、好きな服を自由に着られないことも苦痛でした。とくに母は自分の選んだ服を私に着せたがり、それは今でも続いています。人に言えば『世の中には服を買ってもらえない子どももいるのに、贅沢な悩みだ』といわれるかもしれませんが、こうした過干渉はストレスでしかありません。今でも、自室から玄関に行くまでの間に何かいわれるんじゃないかと、母の目を気にしている自分がいます。

両親はいわゆる『長いものには巻かれろ』的な価値観の人たち。だから、世間体を気にする。私が外食産業の企業に就職したときも、父からは『そんな会社、水商売じゃないか』といわれました」

ダメな点ばかりあげつらう父親

佐藤さんはその後、結婚をし、1児をもうけたが、離婚。シングルマザーとなった。それまでの経験を生かし、マーケティングのプランナーやアナリストとして働いたが、フリーランスで収入が不安定だったため、生活費が足りなくなることもあった。

「仕方なく父に援助を申し出るのですが、それがものすごく屈辱的でした。当時、昼夜逆転の生活をしていたことも気に入らなくて、『報告書や資料を書くのに夜のほうがはかどる』と言うと、一方的に『昼間できる仕事に変えろ』と言われる。収支を事細かく聞かれ、ダメな点を指摘し、決して『頑張れよ』とは言われませんでした」

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