当事者が語る「毒親」と「じゃない親」の境界線 「毒親だった両親」に54歳女性が求めたこと

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長い間、自分をダメな人間だと自己否定していた佐藤さんは、一時期うつ病と診断され、心療内科に通院していた。そんな彼女にとって心のよりどころは、何だったのだろうか?

「『自分などいないほうがいい』という思いから救われたかったのでしょう。若い頃から宗教や哲学、心理学などに興味を持ち、いろいろな形で学んでいたのですが、あるときからスピリチュアルな探求に向かいました。一般的な社会常識からすると、スピリチュアルな世界は理解しがたいものと思われていますが、私には納得できるものでした。

自分なりに解釈すると『その親を選んで生まれてきたから、今の自分がある』ということになります。そこで、まず最大限に現状肯定することからスタートしました。でも、なかなかそれができないから苦しい。どうして苦しいかというと、欠けているものがあるから。それが『愛』なんです。

生まれた瞬間は魂と肉体が融合して完全体なのに、親や社会の影響によって愛が欠けていく。その欠けた愛を取り戻すプロセスが、私にとってはスピリチュアルな学びであり、癒やしにつながったのだと思います」

子育てが終わってから、仕事の場を海外に移していた佐藤さんは、父親が余命宣告を受けたことをきっかけに2019年に帰国。両親との同居を始めたのだが、病気になったとはいえ、父親はあいかわらずで、このままではまたうつ病になると思った頃、父親の容態が急変し、そのまま亡くなった。

「ただ、最期に私と母の手を握って『ありがとう』と言ってくれたことは、私にも母にとっても救いになっています。言われたことや、されたことを今でも苦々しく思い出すことはありますが、もう許そうという気持ちになっています」

「毒親だった両親」に彼女が望んだこと

最後に、佐藤さんに「あなたにとっての『毒親』の定義とは何ですか?」と聞いてみた。その答えは次のようなものだ。

「まず、自分を育ててくれた親を『毒親』と呼ぶことに罪悪感がないわけではありません。でも、殴る蹴るといったわかりやすい形の虐待だけでなく、はたから見れば大事に育てているようでも、目に見えない『毒』をその言動に忍ばせているケースも多いと思います。そのことは、もっと認識されていいのではないでしょうか。

例えば、自分と子どもとの相性が悪いと気づいても、必要以上に愛着を求めることは、子どもにとって『毒』でしかないと思います。子どもは親の所有物じゃない。自分とは違う人間だと思えるかどうかが、『毒親』になるかどうかの境界線じゃないでしょうか。

私も親として欠点だらけですが、自分の子育てで気をつけたことがあるとすれば、それは『いつでも子どもの味方になってやること』でした。世間や社会が『お前はダメだ』といったとしても、私だけは『すばらしい』といってあげる。これは私が、両親に対してそうしてほしかったことでもあります」

佐久間 真弓 フリーライター

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さくま まゆみ / Mayumi Sakuma

山形県出身、駒澤大学文学部社会学科卒業。会社員、編集者、NGOスタッフを経て、フリーライターになる。ハウツーものからルポ、インタビュー記事など、幅広く執筆活動を展開中。大学時代に学んだ心理学を生かし、心の問題や精神医療に関する取材に取り組んでいる。

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