不法入国者が収容される現場の「壮絶な実態」 収容期間は長い人で4年超、医療面での問題も

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――出入国在留管理庁は収容と送還に関する専門部会の議論を始めました。どう評価していますか。

そもそも専門部会自体が結論ありきの議論だ。弁護士出身の委員が孤軍奮闘しているが、予断を排除したうえで、きちんと冷静な議論ができているのか、疑問がある。

収容が長期化しており、それが問題だというのはそのとおりだ。送還に関してもさまざまな実務上の問題がある。ただ、議論の落としどころがそれであることは牽強付会だ。つまり、自分たちで送還を長引かせ、仮放免を厳しくし、いろんな問題が噴出している中、それを逆手にとって規制をさらに強めかねない方向に持っていこうとしている。

出入国在留管理庁発足で何が変わったか

収容を長期化させないのなら、送還を進めるだけでなく、退去強制となった人や退去強制となりそうな人について、例えば在留特別許可をもっと弾力的に運用することも当然考えられる。送還と在留特別許可を両方活用して収容を減らしていくのが普通の考え方だと思うが、当局はひたすら送還を促進するだけで問題を解決しようとしている。

技術的に送還はそう簡単ではない。民間航空機で無理やり送りかえしたり、チャーター便を頻繁に飛ばすわけにはいかない。結局、送還は簡単にできないのだが、それがまるでできるかのような議論にしてしまうと、何も解決しないだろう。

――入管当局としてはなぜ長期収容を志向しているのでしょうか。

当局の言い分としては、退去強制令書が出ているのだから、自費で帰ってください。それで帰らないのだから、長期収容は仕方ないでしょ、というスタンス。仮放免の運用方針も、その内容を明らかにすると適正な職務の執行を妨げられる恐れがあると説明して、専門部会でも国会でも開示しないが、適正な職務とは何なのか、検証するうえでも明らかにすべきだ。

なんといっても、日本に長くいる人たちが結構多く、家族もいる。不法就労がよくないのはもちろんだが、日本で長期間働き、日本語も話せる人たちを、日本が今後どんどん少子化していく中で受け入れようということであるのなら、現在日本にいる人たちにもっと目を向けてもいいのではないか。

2019年12月に自民党の野田聖子代議士が品川にある東京入管を訪問している。外国人政策が2018年から急速に変化している中で、野田氏は「人口減少問題を抱える日本において、ますます外国人の受け入れが必要となる中、しっかり取り組んでいかなくてはならない問題」と述べている。自民党の政治家の中でも、そういう人たちがもっと出てくるといいと思っている。

――出入国在留管理庁が2019年4月に発足したことで、外国人政策に変化がありますか。

1年前の入管法改正などは、入管に捕まった人たちはすごく期待していた。外国人をどんどん受け入れるんでしょ。僕たちも何か変わるんじゃないの、と。しかし、厳しい方向に変化している印象だ。外国人の方、日本に来てください、ウェルカムです、というふうにはとても思えない。

私が牛久の入管で面会した外国人は、夜中も早朝も働き、給料と労働時間を考えれば時給200~300円。何年も働いて、オーバーステイだったので当局に見つかって収容された。本来はこういう人たちに目を向けていくべきだ。

オーバーステイなのだから送還されるのは仕方がないでしょ、という一言で切り捨てるのではなく、何年も日本で身を粉にして働き、ある意味で日本経済を底辺で支えてくれていた。日本の国民も、そこにきちんと目を向けていかないといけないのではないか。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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