不法入国者が収容される現場の「壮絶な実態」 収容期間は長い人で4年超、医療面での問題も
――長期収容には相応のコストもかかります。放免か送還か、早めに判断して長期収容を避けたほうが賢明ではないですか。
そういうコスト感覚があれば、こういうことになっていないと思う。1年も2年も食事を用意し、ストレスをためさせて収容しておくよりも、航空券を買ってあげて、帰ってもらったほうがコスト的にはいい。日本全体がそうなのかもしれないが、日本は変に潔癖主義、建前主義の発想が強くて、実をとるような議論になかなかなりにくい。
入管の退去強制令書発付の判断が誤っていることもある。帰国できない、さまざまな事情を抱えた人たちがいるので、とにかく帰したほうがよいということにはならない。
人手不足で外国人の受け入れをしようとしている現状からすると、日本語も話せて、それなりの技術も身に付けている人たちを正規(労働者)化して日本で働いてもらうということも検討すべきではないか。日本に家族がいる人たちもおり、(そのほうが)コストだけでなく、日本経済にとっても、人道上もふさわしいように思う。
入国警備官の仕事がなくなることを懸念?
入管はむしろ、定員と予算を減らされるのがいやなんだと思う。入管特有の事情として、入国審査官と入国警備官という2つの職種(編集部注:入国審査官は全国で3547人、入国警備官は全国で1505人、「出入国在留管理庁パンフレット2019年版」より)があり、前者は空港などでパスポート審査などの窓口業務を担っている。
後者は(外国人の)摘発や収容、送還などの警察機能を担う。収容施設は入国警備官が担っており、収容者が減ったり、退去強制手続きがなくなると、入国警備官の仕事がなくなってしまう。
実際、(大阪府茨木市にあった)西日本入国管理センターが2015年9月に廃止になった。大村入管の収容者数も十数人に減少し、「西日本の次に廃止されるのは大村だ」と言われた時期もあった。うがった見方をすると、6人部屋がいつの間にか4人部屋になったのも、定員充足率を高めるためだと見えなくもない。
――今回の日弁連の勧告と調査報告書ですが、勧告を出したことにどういう意義と効果があるのでしょうか。
こちらの職権で動いたわけではなく、37人の収容者から申し立てがあり、勧告に至った。正当な理由なく長期に収容している人権救済事件として日弁連が取り上げ、勧告に至ったこと自体に意味がある。日弁連は2014年にも入管収容問題について意見書を公表している。
効果としては、どうしても人権救済手続の限界があり、裁判所と違って勧告に法的拘束力があるわけではない。報道などで取り上げてもらって、この問題を広く世の中の人に知ってもらうことがいちばん大きい。因果関係はわからないが、この勧告の後、大村で何人かの収容者に仮放免が認められたと聞いている。
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