不法入国者が収容される現場の「壮絶な実態」 収容期間は長い人で4年超、医療面での問題も

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――どれくらいの期間になると、長期収容施設に移されるとか、ルールはあるのですか。

ケースバイケースだ。1年を超えて品川に入れられている人もいる。以前は、例えば6カ月や1年を超えると内部で報告をするように、という通達が出たこともあったが、今は収容が非常に長期化しており、収容期間は気にしていないようだ。2000年代に品川や名古屋、大阪の庁舎を建て替えて、施設の構造が牛久や大村とあまり変わらなくなった。設備も差がなくなり、どれくらい経てば牛久に移すとかいう感覚がなくなったのではないか。

――収容者は具体的に、どのような処遇を受けているのですか。

集団居室5~10室で1つのブロックを構成していて、1室に4~6人が生活している。昼間の一定時間、居室から出ることができる。風呂はなく、シャワーで、廊下のような広いスペースに卓球台が置いてある場合もある。居室から出ることはできるが、ブロックから外に出ることはできない。これは全国ほぼ共通。

ネット上に内部の写真が公開されているが、写真を見る限り、ものすごく汚かったり、狭いというわけではない。ただ、実際に入った人に聞くと、一見きれいに見えるが、どうしても掃除が行き届かず、カビが生えたり、臭いがひどかったり。他人の皮膚病が移ったりすることもあるという。

病気になっても本格的な治療はしない

――収容者の1番の不満は何ですか。

以前は土日はずっと、部屋に入れられっぱなしだったが、今は居室から一定時間出られるフリータイムを365日やっていて、運動時間も少しずつ増えている。当局は「開放処遇」と称しているが、こういう施設の中で何年も生活できますか、と。実際外出もできないのに、開放処遇という言い方は無理だろう。

辻慎也(つじ・しんや)/2008年弁護士登録。日弁連人権擁護委員会入管問題PT特別委嘱委員、関東弁護士会連合会外国人の人権救済委員会委員長、千葉県弁護士会外国人の権利委員会委員長を務める(記者撮影)

病気になって具合が悪くなると、中にいる医者で対応するが、なかなか外の診療所に連れて行ってもらえない、という話を聞くこともある。医療面での問題は、かなりの多人数を収容している割に、常勤医が少ないことだ。医師はすべて日替わりで通って、(診察を)しのいでいる。本格的な治療をしない、というのがポリシー。収容に耐える状態にするだけで、病気を完全に治すという発想はない。

――いわば、生かさす殺さず、と。

そうですね。薬漬けのような状態になっている人もいる。やはり長期収容の弊害、影響が収容者に出ている。収容者が口をそろえて訴えるのは、頭痛や不眠だ。安定剤や睡眠導入剤をほとんどの人がもらっている。

入管の問題は収容の期限がないことだ。精神衛生上、非常によくない。刑務所だと、無期懲役以外は、満期になれば必ず釈放されるが、入管は不定期刑に近い。刑務所だと、冤罪(えんざい)を主張している人を別にすると、受刑者は自分がやったことの結果として服役しているので、それなりの納得感があるが、入管はそういうことがない。とくに、難民だと主張している人は、逃げてきた国でこんな目に遭って当然ストレスもある。

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