日本が関与「インドネシア石炭火力」に重大事態 チレボン2号機案件で「贈収賄疑惑」が浮上

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そもそも、チレボン2号機の建設計画の進め方には無理があった。2017年4月19日、バンドン地方裁判所は、発電所の開発予定地域が2つの郡にまたがっているにもかかわらず、土地利用計画に1つの郡しか記載されていないことを踏まえて環境アセスメントなどに基づく許認可を無効とした。

ところが、JBICや3メガ銀行などの金融機関は、判決前日の4月18日に融資契約を調印。同年7月17日、開発地域の範囲の問題が解決していないにもかかわらず、西ジャワ州の局長から新たな環境に関する許認可が出された。

【2020年1月16日8時53分追記】許認可に関する初出時の記述が誤っておりました。上記のように修正いたします。

【2020年1月16日13時18分追記】環境に関する許認可の記述を上記のように修正いたします。

同年4月に制定されたインドネシア政府の政令により、「既存の空間計画に規定されていない場合でも、国家戦略上の価値がある事業については、空間利用許可の発行を可能とする」とされたことを踏まえてのものだ。チレボン2号機の計画は、国家的に重要な事業とお墨付きを得て強引に進められてきた。そうした経緯がある中で、不透明な資金の実態が明るみに出た。

環境破壊や住民の生業を失わせたとの批判も

3メガ銀行は常日頃から、大規模開発プロジェクトへの融資に関する国際規範である「赤道原則」の採択などを通じ、環境や社会課題に配慮をしていると強調してきた。

2019年12月に行われたインドネシア環境団体と弁護士による記者会見(記者撮影)

金融機関による環境・社会への配慮の外部評価を目的として日本国内の環境NGOが結成した「Fair Finance Guide Japan」は、個別事例としてチレボン2号機の建設計画を検証した報告書を公表。2号機計画では、赤道原則やOECD(経済協力開発機構)の多国籍企業行動指針など、国際CSR規範の66項目が遵守されていないとの分析結果を明らかにしている。

2019年12月に来日した、現地の反対住民を支援する環境NGOの幹部や差止訴訟弁護団の弁護士は、既存の1号機の建設以降、環境破壊や住民の生業喪失などさまざまな問題が発生していると指摘した。

石炭火力発電に対する世界規模での風圧が強まる中、オールジャパンで進められているインフラ事業のあり方が問われている。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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