「最高の知性」と目される男が読む世界情勢 米中冷戦の鍵を握る金融テクノロジーとは?

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――シリコンバレーで今いちばんホットな話題とは何でしょうか?

私が頻繁に議論しているのは暗号通貨とデジタルマネーです。実際、私の著書『マネーの進化史』の新版でこれらのことを書き加えました。2008年から昨年までの期間をカバーしています。そこでは、私たちは今後10年間、過去の10年間よりもずっと大規模な金融革命を目の当たりにするだろうと述べました。

過去10年は、古いシステムが崩壊しないよう何とか立て直しを図っていたにすぎません。しかし今、私たちは明らかに新しいシステムを構築していて、未来にはいくつかの異なる可能性が存在します。

米中の金融覇権をめぐる3つのシナリオ

1つ目の可能性は、古いシステムが生き残って支配を続ける未来です。USドルが基軸通貨として残り、アメリカが引き続き金融制裁により強大な力を持ち続けます。

2つ目は、ブロックチェーンをベースとする、第三者の認証を必要としない分権的な決済システムで、国家の管理を逃れることができる未来です。自由主義者にとっては非常に魅力的なアイデアでしょう。

3つ目は、中央集権的に管理された中国のデジタル決済システム、すなわちAlipay(アリペイ)やWeChatPay(ウィーチャットペイ)がほかに取って代わる金融アーキテクチャーとなる未来です。これは確実にドルに対抗する存在となるでしょう。もしくはこの3つの可能性が共存する未来もあるかもしれません。

もっとも、ブロックチェーンをベースとしたビットコインや暗号通貨には限界があります。国家に対して大きな脅威となるからです。またビットコインで代金を払うのはかなり不便です。したがって私の予測では、ビットコインは金(かね)ではなく、一種の資産になるでしょう。本当の競争は、古いドルのシステムと、新しい中国の電子決済システムの間にあります。

中国は金融テクノロジーの面で躍進しています。アメリカにとって最大のリスクは、中国が金融革命を起こし続け、パワーバランスが最終的にシフトすることだと言えるでしょう。

何年も前から私の研究の主要テーマの1つは、「イノベーションを起こすものが金融を牽引し勝利する」ということです。

笹 幸恵 フリーライター

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ささ ゆきえ / Yukie Sasa

流通専門誌の編集記者を経てフリーライターに。ビジネス関係の取材・執筆の傍ら、戦史を中心とした近現代史の取材をライフワークとしている。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『白紙召集――軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)などがある。全国ソロモン会常任理事。

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