「最高の知性」と目される男が読む世界情勢 米中冷戦の鍵を握る金融テクノロジーとは?

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――これから世界が直面するであろう、例えば環境問題や政治、金融問題などグローバルな課題を3つ挙げるとしたら何でしょう。

人類が直面している危機として、今どきの答えとして挙げるなら気候変動でしょう。しかしこれは最も差し迫った危機というわけではありません。戦争のほうがより危機的だということは歴史が示しています。核戦争は、じわじわと訪れる気候変動より、瞬間的かつ破滅的な結果をもたらします。

今は、アメリカ対中国という第2次冷戦期の初期段階に入っていると言っていいでしょう。両国が計算を誤れば、冷戦がいとも簡単に武力衝突となる可能性があります。したがって、私はこれを1番の危機として挙げたいと思います。

2番目に、ちょうど1世紀前の教訓から、変異型インフルエンザ・ウィルスのほうが気候変動よりずっと差し迫った危機だということがわかります。100年前のいわゆるスペイン風邪は、第1次世界大戦よりも多くの死者を出し、人類を壊滅状態に追い込みました。ネットワーク化された世界がその一因です。これは明日にも起こるかもしれません。そして100年前よりはるかに速く広まるでしょう。

そして3番目が気候変動ですが、2007年からのCO2の排出量の増加は、主に中国が原因です。次がインド。本当に気候変動が怖くて心配なら、どのようにして中国とインドに制約を課すかを考えなくてはなりません。パリ協定にそんな条項はありません。ですから本書では、「ネットワーク化された世界が国際関係のベースとなれば、できるのは無秩序な世界だ」と書きました。

もはや大国は世界的な危機に対処できない

いずれにせよ、戦争やパンデミック、あるいは気候変動など世界的な危機に対処する唯一の方法は、大国の理解だと私は考えます。しかしながら第2次冷戦期の現在、大国にその期待はできないと私は悲観的に見ています。

かつて私は、拙著『文明』で西洋が近代の覇権を握った理由として、政治的・経済的な「競争」、そして「科学」「所有権(法の支配)」「医学」「消費社会」「労働倫理」の6つをキラーアプリとして取り上げました。

その妨げになるのは、これまた拙著『劣化国家』で示した4つ――「世代間協業の崩壊(公的債務超過)」「行きすぎた金融規制」「法の支配の堕落」「民間社会資本の衰退」――です。この枠組みは、現在のアメリカの問題点を考えるにあたり、非常に有用です。

中国もしかり。彼らは6つのキラーアプリのうち、「科学」「医学」「消費社会」「労働倫理」の4つはダウンロードしましたが、「競争」と「法の支配」は拒んでいます。不完全なOSなのです。そのため、大国として機能しません。アメリカが抱える問題はバグと捉えることができますが、中国はバグではなく仕様の問題。これが、私が悲観的に見ている理由です。

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