ヘンリー夫妻が突然「王室離れ」図る深刻事情 イギリスではどう見られているのか

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今後、夫妻は王室助成金を受け取らない予定だ。夫妻によると、現行では「収入を稼ぐことを禁じられて」おり、これからは職を得ることで状況を変えるつもりだ。

ヘンリー王子は王位継承権順位では6位だが、メーガン妃とともにその人気は非常に高く、インスタグラムのフォロワーは10万人を超える。最新のメッセージには、すでに140万以上の「いいね!」がついている。どのような状況下でも、「食いっぱぐれはない」と見るのが普通ではないだろうか。

マスコミが「トラウマ」に

さて、ヘンリー夫妻はなぜ事実上の「引退」を選択したのだろうか? 噂の1つは、兄のウィリアム王子夫妻との「亀裂」だが、2018年のウィンザー城での華々しい結婚式以前から、過熱報道の渦に夫妻が巻き込まれ、これが相当のプレッシャーになっていたことは周知の事実。

ヘンリー王子とメーガン妃は、交際開始時点から、メーガン妃がアフリカ系アメリカ人で、離婚歴があることから、バッシングの嵐となった。

結婚式直前には、メーガン妃の父トーマス・マークルさんの「やらせ写真」疑惑(娘の結婚を待つ様子を、いかにも「たまたまカメラが撮影した」風に見せた)、結婚式への不参加、揚げ句は、娘から来た手紙を新聞に持ち込んだという事件も発生。メーガン妃は自分の家族に大きな心理的損害を受けることになった。

プライバシーを重要視するヘンリー夫妻と、メディアとの「対決」があらわになったのは、アーチー君出産騒動。通常であれば、ウィリアム王子の妻キャサリン妃のように、どこで子供を産むかをあらかじめメディアに伝え、出産直後はカメラの前に姿を現すが、メーガン妃はどこで子供を産むかをいっさい明らかにしなかったため、メディアが右往左往した。

昨年には、民放ITVの番組の中で、いかに執拗にメディアに追われたかについてメーガン妃が涙ながらに語った。同時期、ヘンリー夫妻はタブロイド紙の過熱報道を訴追する動きに出て、メディアを敵に回した。ITVの番組の中では、兄ウィリアム王子との亀裂をヘンリー王子が示唆する場面もあった。

ヘンリー王子が母のダイアナ元王妃を失ったのは、13歳になる直前。同妃はパパラッチに執拗に追われた揚げ句、交通事故に巻き込まれたとされており、ヘンリー王子がマスコミを嫌悪するのは想像にかたくない。母だけでなく、妻まで犠牲になるのは避けたいと考えるのは当然だろう。

今のところ、ヘンリー夫妻の決断を「人間らしい」と共感を持って評価する声はイギリス内では少ないが、長い目で見れば、「ヘンリー夫妻は新たな王室の姿を作った」といわれる可能性がないわけではない。

次の「あっと驚く」動きは何か。しばらくは夫妻のインスタグラムをチェックするしかない。

小林 恭子 在英ジャーナリスト

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こばやし・ぎんこ / Ginko Kobayashi

成城大学文芸学部芸術学科(映画専攻)を卒業後、アメリカの投資銀行ファースト・ボストン(現クレディ・スイス)勤務を経て、読売新聞の英字日刊紙デイリー・ヨミウリ紙(現ジャパン・ニューズ紙)の記者となる。2002年、渡英。英国のメディアをジャーナリズムの観点からウォッチングするブログ「英国メディア・ウオッチ」を運営しながら、業界紙、雑誌などにメディア記事を執筆。著書に『英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱』。

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