ヘンリー夫妻が突然「王室離れ」図る深刻事情 イギリスではどう見られているのか

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金融経済紙「フィナンシャル・タイムズ(FT)」は「公的視線から身を引く(pull out from public eye)という表現を使ったが、記事そのものは1面に出た。とにもかくにも、「一大事」なのである。

筆者の周囲で、ヘンリー夫妻の決断について聞いてみた。朝、子供たちを保育園に連れていく途中のスザンナさんは、「どっちでもいいけど、どうせ有名人なんでしょ? お金がたくさんあるんだから、働かなくてもいいのよね」と感想を漏らす。

「メーガンさんは、ずいぶんとメディアに追われていたわよね。公務から遠ざかるのは無理もない。これで楽になるんじゃないかしら」とスザンナさんの友人、シベルさん。2人とも、EUからの移民の女性たちで、英王室にとくに強い思い入れがある、というわけではなさそうだ。

デービッドさんは、年金生活者。「これで税金が使われなくなるなら、うれしいね」。しかし、結局は税金が使われることになるのではないかと懸念しているようだった。

「王室知らなかった」「財政的に大丈夫か」

一方、BBCや新聞各紙の報道を見ると、最大の批判は「女王やほかの王室メンバーが知らない間に、事実上の引退宣言をしてしまったこと」。

BBCは、王室が「傷ついた」と9日付で報じた。ヘンリー王子夫妻の将来については王室内で話し合いがあったけれども、まだ「始まったばかり」だった。BBCの王室担当記者によれば、今回の声明文の発表で、「王室は不意打ちを食らった」。王室の公式見解が出たのは、ヘンリー夫妻の声明文発表から30分後であったという。

この点に勝るとも劣らないのが、夫妻が「財政的に自立したい」と表明したことへの批判だ。もちろん、それ自体はいいことなのだが、夫妻のウェブサイトによると、ウィンザー城にある、巨額をかけて改装した自宅フロッグモア・コテージにはそのまま住み続け、かつ夫妻とアーチー君の警備費用(年間65万ポンド=約9200万円=といわれている)も、これまで通り負担してもらう予定だ。

つまり、「公務は退くのに、王室のメンバーであることから生じる特権は手放さないのではないか」という疑念である。

英王室は公務援助のために「王室助成金」を受け取っている。これは「国王の公の不動産(クラウン・エステート)」からの収益で、その多くが国庫に入るが、一部が助成金という形で女王に戻されている。ヘンリー王子夫妻の場合、その公務の5%がこの助成金で賄われており、残りは父親チャールズ皇太子のコーンウォール公領からの収入による。

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