フェイスブックも参戦、ネット札束外交過熱 ワッツアップ買収に1.9兆円、M&Aブームが始まった
フェイスブックにとっての課題は、離反しつつある若者を引きつけること。複数の調査によると、欧米主要国では若者のフェイスブック離れが進み、すでに利用者数は減少に転じている。このままでは数年でフェイスブックは消滅する、との衝撃的な予測も語られるようになっており、競合のサービスを取り入れることは大きな課題になっていた。そこでフェイスブックのライバルとも目されるワッツアップを身内に取り込んだというわけだ。「4億以上のユーザーが愛しているワッツアップは強い」(チャヒル氏)。
買収後もワッツアップは独立した企業として運営されるが、コウム氏はフェイスブック取締役に就任する。両社の連携強化を進めることでフェイスブックを活性化できるかどうかが問われる。
グーグル、アマゾンも
活性化のために大型M&Aへ走る──。
この動きは、なにもフェイスブックに限ったものではない。米西海岸のネット大手4社(アップル、グーグル、フェイスブック、アマゾン)に共通した動きだ。年明け以降に明らかになった主なM&A案件だけでも膨大だ。M&Aからは、各社が力点を置く戦略が透けて見える。
グーグルは、モトローラ・モビリティの端末事業(主要特許を除く)を売却する一方、収益多角化を狙って家庭用サーモスタット開発のネストラボを買収している。昨年12月にもロボット開発のボストンダイナミックス、人工知能開発のディープマインド・テクノロジーズなどを買収しており、ロボット工学に力を入れている。
アマゾンが力を入れるのがゲームだ。2月5日にはビデオゲーム開発会社のダブルヘリックスを買収した(買収額非公表)。DNAの二重らせんという意味を持つダブルヘリックスは、二つのゲームスタジオが07年に合併して誕生。75人の社員がおり、今回の買収によって、アマゾンは優秀なゲームプログラマーを手に入れることになる。アマゾン自体、12年にゲーム開発スタジオを設立し、ゲーム事業拡充を目指している。革新的なゲーム機を開発し、300ドル以下の価格で売り出す計画もうわさされている。
アップルは今年度の第1四半期(2013年10~12月期)だけで、前年度実績を上回る約5億ドルを買収に充てるなど、M&Aには力を入れている。血流音を研究し、心臓発作を防ぐセンサーや医療機器の自社開発も検討中。ジェフ・ウィリアムズ業務担当上級副社長は、米食品医薬品局の医療機器承認責任者と話し合いを行っている。
また、サンフランシスコ・クロニクル紙によると、アップルは昨年春、テスラモーターズのイーロン・マスクCEOに買収を持ちかけたという。報道後、「買収の可能性は高くない」とマスクCEOはコメントしているが、交渉自体を否定はしなかった。
サニーベールでコンサルティングを行うフュージョンリアクターの徳田浩司氏は「形式上はテスラ買収ということで、テスラとアップルが合併し、イーロン・マスクが次期CEOというシナリオもありうる」と予測する。
いまだ大きな動きを見せていないアップルの次の挙動に、注目が集まっている。
(週刊東洋経済2014年3月8日号〈3月3日発売〉 核心リポート01に一部加筆)
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