20年前、日本のビジネスマンは誰も私の話を聞かず
京都には、実は日本の一流化粧品会社がこぞってOEM(相手先ブランドによる生産)供給を依頼する小さな製薬会社がある。「マイクロニードル」と呼ばれる経皮吸収分野の最先端技術を惜しみなく使った美容シートの研究開発を行う、コスメディ製薬(本社・京都市南区)だ。
2019年夏、販売数ナンバーワンを独走する美容誌で「マイクロニードル」化粧品特集が行われた。マイクロニードルとは、ヒアルロン酸を数百ミクロンの超微細な針状に結晶化したもの。均一で正確な大きさ、高さ、角度に形成されたマイクロニードルが高密度な剣山のようにずらりと並ぶパッチを肌に貼ることで、肌の水分でマイクロニードルが溶け、角質層にヒアルロン酸が浸透して肌をふっくらとさせ、小じわを目立たなくする効果に優れている。
美容誌の特集を見開きで飾った各社のマイクロニードル化粧品は、なんとほぼすべてコスメディ製薬のOEM製品だったというから驚きだ。追随する外国製品や他社製品との比較でも、群を抜く品質の高さが見て取れる。
また、マイクロニードルには美容を超えた用途も期待されている。注射針を必要とせず安全に皮膚から吸収させる特性を生かし、乳幼児に心理的プレッシャーを与えることなく予防接種などを行える。自己投与も可能で、医療費の削減にも大きな効果がある。輸送・保管に便利という特徴もあり、感染症のパンデミックが発生した地域などへ大量のマイクロニードルワクチンを送り込むことも容易だ。
美容・医薬業界で大きな注目を集め、大成功を収めているマイクロニードル化粧品だが、特筆すべきは、その研究開発を牽引してきたのが、京都薬科大学出身の中国人女性研究者であるということだろう。
薬学博士、権英淑(ケン・エイシュク)55歳。大学院修了後に元積水化学の工学博士・神山文男と共同起業したコスメディ製薬株式会社の取締役であり、同社の薬学・DDS(ドラッグデリバリーシステム)事業分野を担当、製品の広報役も務める。
権は、コスメディ製薬を起業した2001年頃の記憶をたどりながら、日本在住25年の流暢な日本語でこう話す。
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