米「イラン攻撃」さえ楽観する市場が見逃す真実 株価は短期的には再度上昇の「恐れ」さえある

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おそらく投資家の頭のなかには、昨年9月14日にサウジアラビアの石油施設が、無人航空機などで一部破壊された時の経験が、あるだろう。この際は、WTI原油先物価格は、同月13日金曜日の1バレル=54.85ドルから、週明け16日月曜日には一時63.38ドルまで上振れた。しかしサウジアラビア政府が、比較的短期間に施設が復旧すると表明したこともあって、その後の原油価格は落ち着きに向かい、主要国の株式市況にも大きな影響は生じなかった。

今回は、「今のところは」原油の生産や輸送に支障が生じているわけではなく、原油先物価格も昨年9月の高値レベルに面合わせした程度で、その水準を大きく上抜けたわけでもない。したがって、やはり短期的には、アメリカの株式市場が楽観基調を取り戻すことがありうると考える。アメリカ株が上昇すれば、日本株も吊り上げられるだろう。

だが「イランは今後も何らの大規模な報復措置をとらない」、と考えるのは、あまりにも楽観的過ぎるだろう。

原油価格への影響も、アメリカとの関係が近いサウジアラビアにおいて、「原油生産施設が再度攻撃される」、あるいは「ホルムズ海峡を航行するタンカーの安全が脅かされる」、という展開になれば、エネルギー価格が押し上がり、原油製品を消費する企業や家計の負担を重くして、景気抑制要因として働くことが懸念される。

したがって、当面の主要国の株式市況が、短期的に楽観に走れば走るほど、その分、その後の株価下落局面が一段と厳しいものになるばかりだろう。そのため、ごく短期的な株価見通しとして、すぐに株価が上昇基調に復してしまうという「恐れ」が強い、と述べたわけだ。

肝心の主要国の経済状況は?

こうした中東情勢の緊張を横においても、そもそも主要国の経済実態は引き続き不振で、それに対して株価は楽観過ぎる。

たとえばアメリカでは、中東情勢に紛れてしまったが、3日(金)に発表されたISM製造業景況指数は、2019年11月の48.1から同12月は47.2に低下した。

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