逃亡後のゴーンが明かした日本への「復讐計画」 レバノンでの「忘年会」で知人に語った

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しかし、ゴーン氏のレバノンでの現況が新たなキャリアの機会をもたらす可能性がある。今日のレバノンは金融破綻の崖っぷちにあり、権力争いをする多くの派閥に引き裂かれていた1999年の日産に類似していると言えるだろう。希望を失ったレバノン人にとってゴーン氏は、国の財政再建を果たすために神が送り込んだ男のように見ているのかもしれない。

ここ数年、2番目の妻でレバノンと関係の深いキャロル氏との結婚のおかげで、ゴーン氏はレバノンで生活する時間が増えていた。2022年の定年退職後はここで人生の最期を迎えたい、と友人たちにも語っていた。

「ゴーン氏は、この地域で最も有名な新聞社、ロリアン・ル・ジュールを買収しようとし、レバノンの国を救うようなシンクタンクを設立しようと考えていた」と、ゴーン氏の友人の1人は話す。

ゴーン逃亡が日本に与える影響

今後、ゴーン氏はレバノンで大きな役割を担うことになるかもしれない。この国や企業の成長は、ゴーン氏の利益にもつながる。同氏はIksirという名の小さなワイナリーと、小さいながら活動的な銀行、Saradar、そしてCedrarと呼ばれる不動産プロジェクトの株を保有しているのだ。

一方、日本の検察は、ゴーン氏の国外逃亡を利用するかもしれない。同氏は逮捕後130日身柄拘束された末、検察による監視下に置かれた生活を続けており、これは典型的な「人質司法」だとして世界のメディアからも批判を浴びていた。

が、ゴーン氏がいとも簡単に国外逃亡したことによって、検察はやはり簡単に保釈するべきではないとして、この歪んだ司法制度をより強固なものにしようとするかもしれない。批判をおそれる裁判所もこれに追随してしまう可能性がある。

しかし、今回、ゴーン氏の国外逃亡を許したのは、保釈したという判断ではない。日本の裁判所や検察は、少しでも逃亡のおそれのある被告人は身柄を拘束しておけばいいという考えに拘泥し、身柄拘束をできるだけ避けながら逃亡を防止するためにどうしたらいいのか考える努力を怠ってきた。ゴーン氏の逃亡はその結果であることを直視するべきだろう。

レジス・アルノー 『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員

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Régis Arnaud

ジャーナリスト。フランスの日刊紙ル・フィガロ、週刊経済誌『シャランジュ』の東京特派員、日仏語ビジネス誌『フランス・ジャポン・エコー』の編集長を務めるほか、阿波踊りパリのプロデュースも手掛ける。小説『Tokyo c’est fini』(1996年)の著者。近著に『誰も知らないカルロス・ゴーンの真実』(2020年)がある。

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