米軍での性的暴行に声を上げる「男性」被害者 その数はなんと1万人に上る
自宅では、誰にも暴行を受けたことを話さなかった。教会に通うのをやめ、酒におぼれて、仕事を続けられなくなったという。自分のセクシュアリティーについても疑問を感じた。家族は、なぜ彼がきちんと行動できないのかといぶかしく思った。
何が起こったかを家族に話そうと決意するまで、5年の歳月が必要だった。
25年間、苦しめられてきた
ヒース・フィリップス 48歳
海軍に入隊、1988年に被害を受ける
アメリカ・テキサス州中央部のフッド基地で、ヒース・フィリップスは何百人もの兵士の前に立った。深呼吸をして、25年間彼を苦しめてきた秘密を明かし始めた。
「わたしはヒース・フィリップスです。アメリカ海軍に在籍していたとき、性的暴行を受けました」。
1988年、フィリップスが17歳のとき、彼は最初の船に乗った。ある晩、水兵のグループが「町に行かないか」と彼を誘った。フィリップスによると、彼らはマンハッタンに行き、目が覚めると彼はホテルの床に寝ていたという。そのときグループの1人が彼の顔に射精し、ほかのメンバーは彼のズボンを脱がそうとしていた。フィリップスは彼らの手を引きはがし、トイレに立てこもった。
翌日、船の下士官に事件を報告すると、下士官は疑わしそうに彼を見て言った。「飲んでたのか? 未成年が酒を飲むと厄介なことになるのは知ってるか?」
フィリップスによると、彼は船の奥のほうにある寝台に戻された。その寝台は、暴行された相手のすぐ近くだった。何カ月ものあいだ、彼は繰り返しレイプされた。
フィリップスは脱走し、捕まって、船に戻された。その後、何度も脱走した。やがて、度重なる脱走により除隊となった。名誉の除隊ではなかった。
何十年ものあいだ、誰にも何も言わなかった。しかし、2009年に退役軍人病院でカウンセリングを受け、沈黙していたら、軍隊の中で暴行が放置され続けるだけかもしれないと考えるようになった。
彼は活動団体のメンバーとなって声を上げ、政治家とも話をする。議会の調査も彼を後押しする。そしてフィリップスはアメリカ軍基地で講演をするようになった。最初は緊張したが、いまではそれが大事な心の癒やしの一部となっているという。