米軍での性的暴行に声を上げる「男性」被害者

その数はなんと1万人に上る

海軍に所属していたイーサン・ハンソンも米軍で性的暴行を受けた数多くの男性被害者の1人だ(写真:Mary F. Calvert via The New York Times)

アメリカ軍隊での性的暴行については、広く認識されてはいるが、あまり理解はされていない。議員やアメリカ国防総省のリーダーは、被害にあった数千人の女性軍人に目を向けがちだ。しかし、実はそれよりも多くの男性が、長年被害を受けてきた。

同省の統計によると、アメリカの軍隊では平均で毎年約1万人の男性が性的暴行を受けている。その被害者は圧倒的に若く、軍隊での階級が低い人たちだ。その後、被害者の多くはひどく苦しみ、軍から追い出され、民間人としての生活でなかなか足場を築けない。

軍隊での男性の性的暴行の結果、何十年ものあいだ生じてきたのは沈黙だった。あまりにも屈辱的で、犯罪を訴えられない被害者の沈黙。犯罪を追及する能力がない軍当局の沈黙。問題が存在するとは考えない指揮官の沈黙。あまりにも恥ずかしく感じて、抗議できない家族の沈黙――。

男性と女性の被害者はほぼ同数

割合としては、軍隊で性的暴行の被害に遭う確率は女性のほうがずっと高く、男性の7倍だ。だが、軍隊には男性のほうが圧倒的に多いため、近年では女性と男性の性的暴行の被害者数はほぼ同数で、国防総省の統計によると、年間でそれぞれ約1万人だ。また、女性が軍隊にフルに参加できるようになる前は、被害者の大半が男性だった。

何世代ものあいだ、軍隊は男性の性的暴行の被害者を探そうとしなかった。だから、彼らの姿が見えなかったのだと、国防総省の性的暴行防止および対応局の副ディレクターであるネイサン・W・ガルブレスは言う。ようやく2006年になって、同局が軍人にアンケートをとり始め、少なくとも女性と同じくらいの男性が被害を受けていることを、軍が認識するようになった。

過去に被害を受けた多数の男性にとって、近年の状況の進展は、多少の心の平安につながるだろう。しかし、被害はすでに生じてしまった。憎しみと苦痛に押し潰されて、多くの人の生活が崩れた。彼らに何が起こったかが認識されるまでに、そして彼ら自身が認識するまでに、何十年もが過ぎていった。

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