「やすらぎの刻」認知症の親持つ子ほど刺さる訳

老いも病も死も決して美談では済ませない

ドラマ『やすらぎの刻〜道〜』の魅力とは? 写真は脚本を担当する倉本聰(左)と、主演の石坂浩二(右) (写真:日刊スポーツ新聞社)

わが父は特別養護老人ホームに入っている。入所して1年10か月。足腰も弱って車いす生活ではあるが、とにかくよく食べる。今がいつで自分がどこにいるのかわからない「見当識障害」はあるし、同じ質問を連続8回するが、人の言葉尻を捉えてダジャレを発するときもある。転倒が最大の問題点だが、今のところ派手に転んでも、骨折などの大事には至っていない。本人も「俺は転ぶ専門だから」と話して、おどけているそうだ。

老人ホームの実態を如実に描いているわけではないが、年をとる現実をちょうどいい塩梅の悲喜劇で見せてくれるドラマがある。倉本聰脚本の昼ドラ「やすらぎの刻~道」(テレ朝)だ。2017年に放送した「やすらぎの郷」の待望の続編。待望していたのは私だけ?と思うほど、あまり話題になってはいない。私の周囲でも観ている人が極端に少ない。面白いのに。

今作は老人ホームを舞台にした「現代編」だけでなく、脚本家である主人公の石坂浩二が描く架空のシナリオ「道」(昭和編と平成編)も織り重なっていく壮大なドラマだ。壮大過ぎるので、現代編に的を絞って、やすらぎの生々しい魅力をお伝えしたい。題して「ちっともやすらがない世界」。

往年の名女優が魅せる「光と影」

舞台は「やすらぎの郷」という特殊な超豪華老人ホームだ。海沿いの広大な敷地には、ヴィラタイプの戸建て個室から病院棟、スポーツジムまである。ここの創設者で大物フィクサーが認めた人しか入居できず、入居者も場所も公にされない秘密の施設。入居の条件は、テレビ、映画、舞台と、芸能界の発展に貢献した人のみ。昭和の黄金期に活躍した俳優、脚本家、監督などが入居しているという設定だ。

とくに、女優達が繰り広げる我の張り合いが、えげつなくて心躍る。10代の頃に女優デビューし、梨園のプリンスと恋に落ちて身ごもるも、引き離されてアメリカでひとり出産した経験がある「お嬢」は、浅丘ルリ子が演じる。甘っちょろく世間知らずのまま年老いたお嬢様という役どころだ。

お嬢とは真逆のキャラで、皮肉と悪戯が大好きな「マヤ」を加賀まりこが演じる。自分が知る芸能界の醜聞を手記にまとめようともくろむ「ゲスさ」も持ち合わせている。このふたりは間違いなく「やすらぎ」を引っ張る名コンビだ。お互い罵り合いながらも、時には妙に団結する。石坂に対しても辛辣に毒を吐く。性善説に基づかない女優像をたっぷり見せてくれる。

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