2060年、日本の1人当たりGDPは中印に勝てるか 未来の世界経済の中心は、欧米から中印へ

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人口が多い国のGDPが大きくなるのは当然です。ですから、中国やインドのGDPが大きな値になるといっても、それはさして驚くべきことではないと言えるかもしれません。

経済的には、1人当たりGDPが重要です。これは、その国の豊かさを示す指標です。

OECDの推計で1人当たり実質GDP(2010年購買力平価のドル評価:Gross domestic product per capita, volume in USD, at constant 2010 purchasing power parities)を見ると、図表4で示したとおりです。

日本の1人当たりGDPは?

日本の1人当たりGDPは、2020年の3万9666ドルから2040年の5万4308ドルへと、1.4倍になり、さらに2060年には7万7242ドルと1.9倍になります。

しかし、2040年には韓国が5万9338ドルになり、日本を追い越します。2060年には、韓国の1人当たりGDPは8万3300ドルになり、日本より7.8%ほど高い数字となります。

アメリカの1人当たりGDPは、2020年には日本の1.4倍ですが、2040年には日本の1.3倍となり、2060年には1.2倍になります(注)。

中国の1人当たりGDPは、2020年に日本の44.8%であるものが、2040年には日本の61.5%となり、2060年には63.9%となります。

インドの1人当たりGDPは、2020年には日本の19.0%でしかありませんが、2040年には34.0%となり、2060年には40.0%となります。

このように、1人当たりGDPでみれば、中国もインドも、2060年になっても日本の水準より低いままです。

しかし、日本との差が縮小することは間違いありません。

これによって、高度な専門家を日本に呼べないといった問題が生じる可能性があります。それだけではなく、一般的に外国人労働者の確保の点で日本が困難な状態に直面する可能性もあります。

(注)日本とアメリカの1人当たりGDPの格差が将来縮まるというのは、奇妙な結果のようにも思えます。ただし、ここで用いている評価基準(2010年購買力平価のドル評価)ではなく、図表3に示したドル建て名目GDPと将来人口推計値から計算しても、似たような結果が得られます。こうなる理由としては、日本の人口が減少を続けるのに対してアメリカの人口が増加することが考えられます。もう1つ考えられるのは、本文中に述べたように、日本の予測値が過大推計であることです。
野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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