恵方巻きだけじゃない!「食品ロス」に秘伝の策 年間600万トン以上の廃棄を少しでも減らせ

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理研ビタミンはドレッシングやわかめスープで知られる総合的な食品素材メーカー。発祥につながる天然原料由来の改良剤事業が柱の1つで、2020年3月期の事業セグメントの売上高は230億円見込み(前期比0.3%増)。第2四半期の売上高は114.7億円と、前年同期比2.8%増だったので、好調と言えるだろう。中国とシンガポールに地場の加工食品メーカー向け事業拠点を構えるなど小回りの利いた提案力が自慢だ。

消費・賞味期限の延長や食感へのこだわりといった需要は、国内のみならず中国や東南アジアでも高まる一方で、研究開発現場に求められる課題は顧客ごとに異なって複雑化の一途をたどってる。

和菓子は硬くならない老化防止効果がカギになる(理研ビタミンのA&Iセンター)  

たとえばコンビニで売られるサンドイッチ。野菜と一緒になっても水が出ないからパン生地がべとつかない。当たり前のようだが、これこそ改良剤の効用だ。焼きたてから店頭に並ぶ期間中に、膨らんでは縮む老化を防止する機能も大事だ。いずれも食感の改善が主眼で、その一環として、賞味期限を延ばしたいという発想で研究開発に取り組む。近年はコンビニ向けの総菜・弁当用食材、パン・和洋デザート類、冷凍食品向けの課題テーマが潮流となっている。

パンや和・洋菓子用の改良剤は、カビ防止のエージレス(脱酸素剤)や包装資材の機能と相まって、開封前の品質維持機能を分担する。「3~5日という食感を保つメドを1日でも長く延ばしたいとの要望を満たすことに挑戦する」(パン担当者)。コンビニの人気商品である冷やし中華やざるそばなど調理麺も、ほぐれやすさの向上に乳化剤が使用されるケースがある。「食感、のどごし、日持ちといった、三拍子も四拍子もそろった機能」(麺・豆腐担当者)を目指す。

賞味期限が年月表示に変わるだけでも大きい

2019年10月1日、理研ビタミンは千葉工場内に16億円を投資し、アプリケーション&イノベーション(A&I)センターを稼働開始したばかりだ。応用研究の拠点だった千葉工場に、基礎研究を担っていた大阪工場と、顧客との接点を務めるアプリケーションを担っていた草加工場の2つの機能を移した。地上6階建ての新棟には約60名の研究員が常駐し、食品カテゴリー別の4グループ以外に、製剤開発や基礎研究、市場調査といった専門グループがある。

さらには上海とシンガポールの拠点にいる日本人スタッフらと、動画モニターで常時情報をやり取りできる仕組みを導入。A&Iセンター長を兼ねる北川剛司・食品改良剤開発部長は「研究や評価、分析、顧客提案など、すべてがここで完結する。商品の入れ替わりが早いコンビニ業界への対応がしやすくなった。これからの日本は人口減少に直面するが、それでも加工食品の市場自体は消費者ニーズの高まりもあり、やれることはたくさんある」と胸を張る。

特に常温で保管できる加工食品は、開封前であれば、消費・賞味期限延長の余地が大きい。賞味期限の表示方法では、日付を省いた年月表示(特例あり)に順次切り替わるだけでも、インパクトはある。陳列する期間が延びれば延びるほど、期限切れで処分される量は格段に減るからだ。食品物流業界が音頭をとる形で、納品期限の緩和や配送保管の慣習見直しなど、ロジスティックスの効率化が進めば、廃棄処分を減らす動きに社会全体が大きく舵を切ることになる。

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